メルボルンで開幕戦オーストラリアGPを迎える直前、メルセデスの空気感が妙に明るい。F1 TV解説のジョリオン・パーマーは、その雰囲気を「自信が滲み出ている」と言い切った。一方で、笑顔の裏に残る不穏も同時に指摘した。信頼性がまだ「疑問符」だという話だ。

プレシーズンでは、メルセデスが新レギュレーション下で最有力だと囁かれてきた。だが、バルセロナとバーレーンのテストは“完全に穏やか”ではなかった。作業計画がパワーユニット交換で何度も中断し、パドックには「盤石ではないのでは」という囁きが出た。それでも当の陣営は、少なくとも外から見る限り、動揺を見せていない。

パーマーが一番強く感じ取ったのは、マシンの見え方と、チームの表情の一致だ。

「僕にとってメルセデスで一番大きいのは、コース上でクルマが良く見えることだ。」

見た目が良い、というのは曖昧に聞こえるかもしれない。だが実際、挙動が落ち着いているか、入力に対して破綻しないか、ライン変更や縁石で乱れないか。そういう“映像で分かる安定感”があるという意味だ。さらにパーマーは、今季序盤の全体傾向も混ぜて語った。

「かなり一貫して見える。信頼性にはまだ疑問符があるし、ドライバーもロックアップがなかったわけではない。今年の不安定さの大きな特徴になっているからだ。」

新レギュレーション初年度らしく、ロックアップはグリッド全体に出ている。メルセデスだけが例外ではない。問題はそこではなく、その状況でも“メルセデスだけ妙に明るい”ことだ。

象徴として挙がったのがジョージ・ラッセルだ。テスト総周回数で最も多く走り込み、やるべきことを片付けたように見えた。だが、パーマーが強調したのはラップ数より表情だった。

「他のみんなは、典型的なレースランをやろうとしていた。メルセデスはそれをやらなかった。彼らはすごく満足している。パドックを歩くジョージ・ラッセルを見ても、ただただ満面の笑みなんだ。」

この“満面の笑み”が厄介だ。開幕直前のパドックは、だいたい誰もが情報を隠す。まして新規則なら、不安が表に出てもおかしくない。そこで堂々と明るい態度を崩さないのは、強さのサインにも、危うさの隠蔽にも見える。

テストプログラムの組み方も、周囲の期待と疑念を同時に育てた。ライバルがレースシミュレーションや目立つ性能ランで“分かりやすい証拠”を出そうとする一方、メルセデスは別の道を歩いたという。

「でも全体的に、メルセデスを見ると、本格的な性能ランをやることにこだわっていない。本当の長いラン、いわゆるレースシミュレーションも、きちんとはやっていないように見える。」

つまり、見せていない。あるいは、見せる必要がなかった。そこに“何かを隠しているのでは”という連想が生まれる。パーマーは、ドライバーコメントの温度差にも触れた。

「いろいろなドライバーが自分のクルマについて違う見方をしている。彼から出てくる言葉は、いつも輝くように前向きなものばかりだ。それらをつなぎ合わせようとすると、まだ何か手の内に残しているんじゃないかと思うんだ。」

「手の内がある」。この言い方が一番刺さる。もし本当に余力があるなら、メルボルンの予選と決勝で、それを“結果”として示せばいい。だが、ここで問題になるのが、最初に出た「信頼性の疑問符」だ。

速さは、隠していても出せる。壊れないことは、隠していても証明できない。58周をレーシングスピードで走り切って初めて、疑問符が消える。だからこそ開幕戦は単なる初戦ではない。メルセデスの“自信”が実力に裏打ちされたものか、それとも危うい強がりかを切り分ける試験になる。

最後にパーマーの総括は明快だ。

「だから、結局それが一番のポイントだ。クルマは良く見えるし、チームはただただ自信が滲み出ている。」