メルボルンで開幕する2026年シーズンを前に、アストンマーティンの足元が崩れている。約束された新時代の船出は実現していない。フェルナンド・アロンソにとって、念願の三度目の世界タイトルは「遠のく蜃気楼」になりつつある。
問題の震源地は、新しいホンダとの提携だ。報じられているのは「異常振動」で、バッテリー系を痛めつけたとされる。バーレーンの貴重なテスト最終日、走行は数周程度に限られた。ホンダ側は対策を急いでいるが、アルバートパークを最後まで走り切れる保証すら見えない。速さ以前に、生き残れるかどうかの段階に落ちた。
この状況を、Sky F1解説者のアンソニー・デビッドソンは重く見た。アロンソがチーム内部で必死に立て直しを図る一方で、耐久性と信頼性が根本から揺らいでいるからだ。
「彼らは今、技術的にとても厳しい立場にいる。チーム全体として、だ。フェルナンドも完全にその一部だ。裏で動きながら、文字どおりスピードを上げるために、そしてクルマをもっと信頼できるものにするために取り組んでいるはずだ。」
しかし、ここで残酷なのは「時間」だ。アロンソは44歳で、今年45歳になる。長期的な育成や数年がかりの改善を待つ余裕はない。将来のために今年を捨てる、という選択肢が取りにくい。デビッドソンが指摘したのは、遅さよりも、この“持ち時間の短さ”だった。
「彼はもう、時間に恵まれているわけではない。やることはやってきたドライバーだからこそ、すべてがあまりにフラストレーションになる可能性がある。」
さらに、ホンダとの組み合わせが過去にも感情の摩擦を生んできた歴史がある点は無視できない。プロジェクトの看板は立派でも、現場が崩れたままでは意味がない。デビッドソンは「材料はそろっている」と言いながらも、最大の矛盾を突いた。材料がそろっていることと、今すぐ走れることは別だ。そしてアロンソに残された時間は、材料が熟すのを待つほど長くない。
「でも彼は努力家だし、誰よりもこのプロジェクトを成功させたいと思っているはずだ。机上では、必要な材料は全部そろっていると言える。だから時間を与えれば、良くなると僕は確信している。ただ、最初の話に戻る。時間は彼の味方ではない。」
開幕戦の灯が消えた瞬間、パドックが注視するのはアストンマーティンの順位ではない。まずは走れるのか。走れたとして、どれだけ走れるのか。そして、アロンソの感情がどこまで耐えられるのかだ。デビッドソンは、今年“沸騰”が起きても驚かないと言い切った。
「興味深く見ていこう。今年は彼にとって、感情の面で沸騰してしまうかもしれない。過去にもそれを見てきた。また起きても驚かない。彼はそういう情熱的な人物だからだ。」
