アストンマーティンのメルボルン入りをめぐって、チーム内の温度差が浮き彫りになった。発端は、エイドリアン・ニューウェイが示唆した「周回数制限」だった。ホンダ製パワーユニット由来の強烈な振動が、ドライバーの神経系に物理的なダメージを与えるリスクにつながり得るとして、決勝ではフェルナンド・アロンソとランス・ストロールが「15〜25周」に制限される可能性がある、という趣旨の話だった。
だが当のアロンソは、その見立てに真正面から反論した。痛みで運転が成立しないわけではなく、コントロールも難しくないと強調し、レースの現場感覚を前面に押し出した。
「痛いわけじゃない。クルマをコントロールするのも難しくない。アドレナリンはどんな痛みよりもずっと大きい。もし勝利争いをしているなら、クルマの中で3時間だっていける。そこははっきりさせておきたい。」
「クルマに乗っているとき、制限があって“クルマの感覚”や“自分が何をしているか”が分からなくなるようなことはない。間違いなく、普通ではない何かではある。」
一方で、アロンソは問題の存在そのものを矮小化したわけではない。「異常がある」のは事実で、長期的に放置したときの帰結が読めない点を率直に認めた。短期の我慢と、長期の安全性は別問題だという線引きだった。
「本来あってはならないことだ。これを何カ月も続けて走ったらどうなるのか、僕らも結果が分からない。解決策は導入しないといけない。」
アロンソの説明で生々しいのは、振動がドライバーだけの話ではなく、車体コンポーネントにも影響し始めている点だ。さらに、体が“しびれる”ような感覚が出る時間感覚まで具体的に語った。ニューウェイが語った「神経系ダメージ」という表現の刺激性だけが独り歩きする状況に、現場側の言葉で輪郭を与えた格好だ。
「エンジンから来る振動が、クルマのコンポーネントを少し傷めている。ドライバーも、20分か25分くらい経つと、その振動の周波数が体に入ってくるのを感じる。」
「手とか足とか、そういうところが少し“しびれる”。たぶん、その表現がいちばん近い。」
ただし結論は悲観ではない。ホンダとチームが既に対策を積み重ねており、バーレーン以降に複数のテストを実施し、一部の解決策は現時点で車両に織り込まれていると明かした。拠点「Sakura(ホンダのR&Dベース)」で毎日改善を試みているという言い方は、課題を抱えつつも手当てが進んでいる現実を示している。
「難しい課題ではあるけど、(ホンダのR&D拠点である)Sakuraでは毎日、解決策を見つけようとしている。バーレーン以降、いくつかテストも行われたと思う。」
「いくつかの解決策は、いまクルマに実装されている。ホンダが問題を解決してくれると100%信じている。彼らは過去にもやってきた。いつだって競争力があって、F1のトップエンジンになるはずだ。」
