インド政府が、F1インドGPの復活に向けた初期段階の関心を示した。報道によれば、インド青少年・スポーツ省がブッダ・インターナショナル・サーキット(Buddh International Circuit)を訪問し、開催再開の可能性を探っているという。
インドGPは2013年を最後にF1カレンダーから消えた。以降、復活の話は断続的に出てきたが、深刻な交渉に至った形跡は乏しかった。背景には、当時のプロモーターだったジャイピー・グループ(Jaypee Group)の財務面の問題があり、さらにF1側(FOM/Formula One Management)はインドの行政手続きと税務の壁に直面していた。
最大の争点は、インド国内でF1が「スポーツ」ではなく「娯楽(entertainment)」として扱われた点だった。これにより課税負担が重くなり、その一部をジャイピー側が負担したことで、資金繰りを一層圧迫した。加えて訴訟も発生し、問題は長期化した。結果として、当初5年契約だった開催は完遂されず、実際に行われたのは3回にとどまった。
その後、F1がリバティ・メディア体制になってからも関心自体は語られたが、真剣な協議が進んだとは言い難い状況が続いた。一方でブッダのサーキットは、2023年にMotoGPを開催している。このときはウッタル・プラデーシュ州政府が開催に関心を示し、税務面の問題は比較的少なかったとされる。しかし運営面の課題や開催時期の調整が難航し、2024年、2025年、さらには2026年の復活も取り沙汰されながら、最終的にイベントは消滅した。
インドでは他にも、2023年にハイデラバードでフォーミュラEを開催したが、政権交代をきっかけにレースは打ち切られた。国際モータースポーツイベントが「立ち上がるが、続かない」という不安定さが見えていた。
それでも今回、中央政府が「できるだけ早く」F1復活を検討していると複数の主要インドメディアが報じている。報道では、青少年・スポーツ省が月曜に非公式の説明会を行い、開催再開への意向を示したという。目標は、過去に開催を阻んだ税制と官僚手続きを緩和し、運営が滞らない環境を作ることだ。
また、マンスーク・マンダヴィヤ大臣(Mansukh Mandaviya)がブッダのサーキットを視察し、受け入れ準備を確認したとも伝えられている。現状では改修が必要で、インフラだけでなくコース自体にも手を入れる必要があるとされる。政府側は障壁の整理を進めつつ、F1運営組織との初期協議にも関与している可能性がある。
ただしF1側にも事情がある。現在のF1カレンダーは24戦で、すでに過密だ。新規開催を狙う国は多く、枠の奪い合いは激しい。インドが復帰するには、政治的な後押しだけでなく、商業性・運営能力・安定した長期契約など、説得力のある条件提示が不可欠だ。
人気面では追い風がある。F1はインドで元々一定の支持があったが、近年はSNSの拡散力やNetflixの『Drive to Survive』の影響で関心がさらに広がったとされる。さらに最近のF1映画が需要と熱量を押し上げたという見方もある。とはいえ、インドで最大のスポーツがクリケットである構図は変わらない。
今回の政府の動きには、より大きな狙いも透ける。インドは2036年オリンピック招致を目指しているとされ、さらに2030年のコモンウェルスゲームズ開催も控える。F1のような巨大イベントを回せる国であることを示し、国際大会の開催能力をアピールする意図がある可能性が高い。
