
WRC(世界ラリー選手権)ドライバーたちがFIAの「非現実的」な罰則に反発し、モータースポーツ統括機関へ「緊急の解決策」を求める姿勢を示した。
昨年、FIAのモハメド・ベン・スライエム会長が、ドライバーによる「暴言」に対して厳格な取り締まりを命じ、今年はさらに厳しい姿勢を打ち出した。更新されたFIAのスポーティングコードでは、「不適切な言葉遣いやFIAの威信を傷つける行為」を含む「第12条」に対し、厳格な処罰基準が設けられた。
この基準では、FIAの競技レベルに応じた罰則の重みが設定されており、F1においては罰金額が4倍に増額される特別なカテゴリーが設けられた。WRCは「レベル3」に分類され、罰金は基準額の3倍に引き上げられている。さらに、2回目の違反で出場停止、3回目の違反で選手権ポイントの剥奪が科される可能性もある。
「Fワード」で罰金1万ユーロ(約160万円)WRCドライバー初の処分
今月初め、この新ルールの最初の犠牲者が現れた。WRCドライバーのエイドリアン・フォルモーが、Fワード(F***)を発したことにより、1万ユーロ(約160万円)の罰金を科された。フォルモーはラリー・スウェーデンでのパフォーマンスについてコメントを求められた際、こう発言した。
「クリーンなステージだったけど、轍(わだち)が本当にトリッキーで、良いタイムを出すのは難しいと思う。最初の方の出走は路面の掃除をしているような状態だ。昨日(ステージ11の事故について)は完全にやらかした(We f*ed up yesterday)**。」
この発言が2025年FIA国際スポーティングコード第12条に違反すると判断され、罰則が科された。ただし、スチュワードは、フランス人のフォルモーが英語を母国語としないことや、Fワードが「文化的にコロケーション(慣用表現)」である点を考慮し、さらなる2万ユーロ(約320万円)の罰金を12か月の猶予付きとする決定を下した。
FIAの「過剰な罰則」に抗議声明を発表
こうした処分に対し、WRCドライバーが結成した新組織 「WoRDA(ワールド・ラリー・ドライバーズ・アライアンス)」 は、FIAに対する強い異議を申し立てる声明を発表した。
「WRCドライバーおよびコ・ドライバーの我々WoRDAは、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)に触発され、意見を表明し、明確な基準を求め、協力しながら明るい未来を築いていきたいと考える。
まず最初に、どのスポーツにおいても、競技者は「レフェリー(審判)の決定」に従わなければならない。これは揺るぎない原則であり、我々もこれを尊重する。
しかしながら、我々は全員がフルタイムのプロではない。それでも、極限の環境下で同じ情熱を抱き、戦い続けている。深い森の中、真夜中の凍てついた道、粉塵舞う荒れたグラベルの上…我々は、自然と戦い、タイムと戦い、自らの限界と戦い続けている。
しかし、今や我々の役割は競技だけにとどまらない。
今日、ラリードライバーとコ・ドライバーはアスリートであり、エンターテイナーであり、コンテンツクリエイターであり、常にメディアにさらされる存在でもある。観客のスマートフォンからWRC公式カメラに至るまで、我々は常に記録され、競技前・競技中・競技後を問わず、日の出から日没まで対応を求められる。WoRDAは、FIA会長を含むすべての関係者と建設的に協力し、この素晴らしいスポーツを発展させる責任があると認識している。
しかし近月、些細で一時的な言葉の失言に対し、あまりにも厳格な処分が科されるケースが相次いでいる。これは「受け入れられない」レベルにまで達している。
我々は強く主張する。
・一般的な口語表現と、実際の侮辱や攻撃的行為を同一視すべきではない。
・母国語でない言語を話す際、本人が完全に意味やニュアンスを把握していない可能性もある。
・極限のアドレナリン状態にある数秒後に、完全な自己抑制を求めるのは非現実的である。
・ラリーは過酷なスポーツだ。リスクの高さ、集中力の極限、長時間の激務、あらゆる限界が試される場である。
・こうした状況下で、「言葉遣い」に対してペナルティを課すことが妥当なのか、疑問を呈する。
さらに、罰金額の異常な高さは、ラリー競技者の平均収入や活動資金から見て「不釣り合い」なものである。加えて、これほどの罰金が科されることで、ファンの間に「モータースポーツは金がすべて」という誤った印象を与えてしまう。
そして、我々は問う。「この罰金は一体どこへ消えているのか?」
透明性の欠如は、さらなる不信感を生み、競技者と統括機関の信頼関係を損なうものである。
言葉の失言によるネガティブな影響よりも、過剰な罰則による影響の方が遥かに大きい。したがって、WoRDAはFIA会長との「直接的な対話」を求め、「早急な解決策」を模索することを強く要求する。」
(署名: WRCドライバー & コ・ドライバーメンバー一同)