FIA(国際自動車連盟)は、2025年シーズン中盤からF1のフロントウィングの柔軟性に対する規制をさらに強化する方針を示した。昨シーズンから続く調査の結果、チームが採用しているフロントウィングのフレックス(たわみ)が既存の静的荷重試験を巧みに回避している可能性が浮上したためである。これを受け、FIAはより厳格な技術指令(TD018の改訂版)を発行し、2025年6月のスペインGPから新たな試験基準を導入することを決定した。

この新たな技術指令では、現在15mmまで許容されているフロントウィングのたわみ量が10mmに引き下げられる予定である。この動きは、FIAが2024年シーズンを通じて各チームのフロントおよびリアウィングの挙動を監視してきた結果を踏まえたものだ。昨年、FIAは特定のマシンに特殊カメラを設置し、ウィングのフレックスを詳細に分析したが、全チームが既存の静的荷重試験をクリアしているにもかかわらず、テレビ映像では明らかに大きなたわみが確認されていた。この事態を受け、レッドブルやフェラーリはマクラーレンやメルセデスのウィングが過度にしなっていると指摘していた。

特に、フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、FIAが即座に規制強化に踏み切らなかったことに対し、不満を漏らしていた。

「ベルギーGP以降、FIAがカメラを設置して検証を行った際、私はこの規制が即座に“禁止”されるものと確信していた。しかし、結果的にFIAは“許可”の判断を下した。それによって、私たちは開発の1〜2か月を無駄にしたように感じた。」
「コストキャップ制度があるため、チームは開発方針を慎重に決めなければならない。FIAがこれを禁止すると確信していたため、私たちは別の開発を進めていたが、結果的に風洞実験の時間を無駄にした。それは我々の決断だったが、非常に難しい判断を強いられた。」

FIAのテクニカルディレクターであるニコラス・トンバジスも、2024年内に規制を強化しなかった理由について言及している。

「フロントウィングはさまざまな荷重のかかり方をするため、規則だけでその影響を予測するのは容易ではない。どのチームも異なるデザインを採用しており、すべてのウィングが同じパターンで負荷を受けるわけではない。適切な試験方法を定めることが難しいのが現状だ。」
「この規則は2022年から存在しており、2024年の段階で突然厳格化するのは、拙速な判断になりかねないと考えた。そのため、FIAは段階的に情報を収集し、2025年の変更を経て、2026年にはさらに効果的な規制を導入する方針だ。」

当初、FIAは2026年から本格的な規制強化を実施する予定だったが、現在のフロントウィング技術競争がさらにエスカレートする可能性が高まったため、2025年スペインGPからの新試験導入を決定した。今回の技術指令の改訂により、各チームはフロントウィングのデザインを再考し、規制に適合させる必要があるだろう。F1のエアロダイナミクス競争は今後も続くだろうが、FIAの規制強化が各チームの戦略にどのような影響を与えるのか、2025年シーズンの展開が注目される。