
メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフが、FIAがF1チームによる「結果が見えている抗議」の乱発に対し、何らかの罰金を科す方向で動いていることを明かした。
レッドブルがカナダGP後に提出した抗議は、実質的に時間を無駄にするだけで終わった。場合によってはペナルティの有無が不明確なこともあるが、大半は結果が変わらないことがほぼ確実であり、そうした抗議が繰り返されることで多くの関係者の時間が浪費されている。
抗議は当然の権利であり、否定されるべきものではない。しかし、それが乱用されるとなると話は別だ。ヴォルフもこの点に共感しており、罰金制度には乗り気でないものの、今回のケースに限っては何かをすべきと考えている。
実際にFIAはすでにこの問題に着手しているとヴォルフは語った。
「抗議すること自体は正当な行為だと思っている。僕たちは勝利やチャンピオンシップをかけて戦っているわけで、もし何かおかしいと感じたら抗議すべきだ」
「でも、中には正直、現実的じゃない抗議もある。例えば“スポーツマンシップに反する”といったふわっとした理由や、“セーフティカーとの距離が10台分空いていなかった”なんて抗議もあるけど、ドライバーはその間もデルタタイムを守らなきゃならないんだ。だから、抗議として妥当なものもあるけど、見当違いなものもあると思っている」
「それに、抗議の根拠を探すために2時間も待ったり、急に一件取り下げたりして、結果的に全員が5時間もサーキットに拘束される。そのせいで飛行機に乗り遅れたりするわけで、しかも最初から結果が読めていたような抗議だった。あれは正直、必要なかったと思う」
「罰金の話に戻るけど、誰だって罰金なんて払いたくない。F1としても、あまりに金額が高くなると、一般社会から浮いた存在と見られてしまうかもしれない。でも今回のようなケースでは、罰金を科すのはアリだと思っている。FIAの会長もこの件に取り組んでいると思う」
「少なくとも、抗議して負けたら“こんな大金を失って恥をかいた”と思わせる程度の罰金があれば、次はもっと慎重になるはずだ。そういう方向でFIAも考えていると思うよ」
メルセデスのドライバーでありGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事でもあるジョージ・ラッセルも、ヴォルフの考えに賛同した。現在の抗議手数料2,000ユーロ(約34万6千円)は、大チームにとっては微々たる額だという。
「その通りだと思う。例えば、感情が高ぶって汚い言葉を使った時や、リアウイングに触れただけで大きな罰金が科されることがあるのに、2,000ユーロなんて、何億ユーロも利益を上げているレッドブルやメルセデスにとっては何でもない金額だ」
「もし10万ユーロ(約1,727万円)クラスの罰金を前提に抗議しなきゃならなかったら、チームはもう少し慎重になるはずだし、勝てばその分は返金される。だから、今の制度ではほとんどリスクもなく抗議できてしまっている」
「今回の件も、マックス自身は抗議の存在すら知らなかったと思う。すべてはレッドブル側の判断だった。セーフティカー中にマックスが僕の前に出た件でペナルティを避けるため、先手を打ったように見えた。僕としては、正直あの抗議は無駄な騒ぎだったと思っている」