今季、イサック・ハジャーは多くのファンと関係者を驚かせる存在となった。シーズン開幕戦、オーストラリアでフォーメーションラップ中にスピンし、涙を流してリタイヤした姿をヘルムート・マルコから恥ずかしい、と酷評されたハジャーだったが、それ以降はミスらしいミスをしていない。これまで9戦中5回予選トップ10入りを果たし、5度の入賞で計21ポイントを獲得している。

これは、レッドブルに移籍した角田裕毅の10ポイントを大きく上回っており、さらに、リアム・ローソンをも圧倒している。

「ハジャーは本当に素晴らしいと思う。あの子はまるでロケットのようだ」

とオランダのF1解説者であるアルバースは語った。急上昇するハジャーの評価を受け、一部では今季終盤にも角田に代わってレッドブル入りするのではという見方も出ている。

だが問題は、レッドブルのセカンドシートにある。ダニエル・リカルドが2018年末にチームを去って以来、ピエール・ガスリー、アレックス・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソン、そして角田裕毅と5人のドライバーがこのシートを得たが、誰一人としてフェルスタッペンに匹敵する成績を残すことができななかった。最短の在籍はローソンの2戦、次いでガスリーの12戦だが、ガスリーはレッドブル離脱後にアルピーヌで再評価され、カルロス・サインツも同様にトロ・ロッソを去った後に速さを開花させた。

アルバースは、ハジャーがレッドブルのマシンに乗る前に「離脱すべきだ」と強調した。

「マックスの隣に座れば、誰だって苦しむ。そこは本当に慎重にならないといけない場所だ。もし僕がハジャーのマネージャーだったら、昇格の話には“ノー”と言うだろうね。そして絶対にレッドブルには行かせないようにしていただろう。それどころか、今季中に彼をレッドブル・ファミリーから抜けさせるために、あらゆる手段を講じていたはずだ」

「ガスリーがアルピーヌで息を吹き返し、サインツも移籍後に輝いたように、長いF1キャリアを築きたいなら、レッドブルやレーシング・ブルズに長く留まるべきではない」

角田とハジャーのシート争いについて、今季中の入れ替えはあるのかという質問に対し、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは明言を避けた。

「フラビオ(・ブリアトーレ)のやり方を見習って、“その質問には答えたくない”と言っておくよ。その判断はまだ早い。裕毅はまだ順応しているところだ。Q3進出もしているし、ピットレーンスタートからポイントを獲得したこともある。いくつかの接触もあったけど、まだ先は長い。決断を下すのはこれからだ。時間はたっぷりある」