アストンマーティンとホンダが中国GP(上海)を前に記者の前に座った瞬間、話題はチームが消したがっている一点に吸い寄せられた。バッテリーだ。開幕戦オーストラリアGP(メルボルン)で、フェルナンド・アロンソはリタイアし、ランス・ストロールは周回遅れどころではない大差で走り切った末に未完走扱いとなった。原因として取り沙汰されたのが、パワーユニット由来の“破壊的な振動”がエネルギーストア系統を痛めたという話だった。
上海でホンダのトラックサイド総責任者を務める折原慎太郎は、問題はまだ終わっていないと認めつつも、前進はあったと主張した。
「振動の状況については、いくらか前進が見つかった。今も振動を減らすために懸命に取り組んでいる」
「ただ、信頼性は改善すべき難しいポイントだ。アストンマーティンと対話しながら、さらに別の対策も見つけたので、試せるかもしれない」
「レースでも走行距離を重ねたので、ドライバビリティやエネルギーマネジメントについて学びがあった。その学びをシミュレーションシステムに反映している」
だが、会見の空気が変わったのは“予備バッテリー”の話に入ってからだった。メルボルン後、チームに使えるユニットが実質2つしかなく、その修復に追われているという見立てが広がった。上海で実働できるバッテリーがいくつあるのか。質問は単純で、だからこそ刺さった。折原は修理が進んでいるとしながら、肝心の数字には踏み込まなかった。
「バッテリーの修理を試みている。修理という点では良い進捗も見えている。詳細は言えないが、懸命に修理を続けている」
「振動とは関係なく、バッテリー内部の小さな要因の問題なので、修理できるかもしれない」
さらに「この週末、使えるバッテリーは何個か」と踏み込まれると、折原は線を引いた。
「正確な数は言えないが、予備を増やすために修理を続けている。申し訳ないが数は言えない」
その“答えない姿勢”が追撃質問を呼び、そこでアストンマーティンの現場責任者マイク・クラックが割って入った。
「僕はこう思う……バッテリーの数について、続けて何になる?」
「この話を、しつこく、しつこく、しつこく続けるべきだとは思わない。メルボルンで状況は明らかになった。許してもらえるなら、バッテリーの本数の議論はもう続けない方がいい」
別角度からの質問、たとえばメルボルンでのバッテリーの状態や、ホンダプログラム運用面の課題に触れようとしても、両者は守りを固めた。
「この場では技術面に焦点を当てたい。いいだろうか?」
一方で、問題は“結果”だけではない。報道では、激しい振動がドライバーの身体にも負担を与え、テスト段階では手の神経損傷すら懸念されたという。パフォーマンスも厳しく、メルボルン予選でアロンソはQ1基準から2秒以上離され、苦戦するキャデラック勢より上にいる程度だったとされる。そんな状況でも、クラックはチームとドライバーの一体感を強調した。
「難しい状況なのは明らかだ。誰もこんな立場にはいたくない。だがドライバーも僕らと同じチームの一員で、僕らは一緒に戦っている」
「だから一緒に働く道を見つけないといけない」
「感情的になる時もあれば、建設的な時もある。ドライバーは特殊な状況にいる。僕らがここで常にやっていることを、彼らはやらないといけない」
「毎セッションの後に質問に答えないといけないし、その質問は彼らにとって本当に難しい。解決策を持っていないことも多いし、正しい答えを出せないこともある。だから、フラストレーションが高くなるのは当然だ」
上海での目標は高尚なスローガンではなく、まず“走り切ること”に置かれている。
「走った1周1周が重要だ。レースに出るなら、それが最初の目標になる。だから挑む」
「僕らが進めたステップと、今週末に試すさらなるステップで、そこに近づけるはずだ。それが目標だ」
