2026年のF1は「新時代」のはずだった。だが開幕のオーストラリアGPを経て、FIAとF1が規則の手直しを検討する流れになっている。焦点は、新ハイブリッドの“エネルギーマネジメント”がレースの主役になりすぎ、ドライバーの走らせ方そのものを歪めている点だ。しかも、その歪みが安全面のリスクに直結しかねないという疑念が、パドック内で急速に膨らんだ。
2026年のパワーユニットは、電気と内燃の出力比率を50-50にする思想が核だ。最先端技術の見せ場にする狙いだった一方で、実戦では「速さ」より「電池の残量と使い方」が支配的になり、純粋なドライビングでは埋めにくい要素が前面に出た。観戦上はオーバーテイクが増えて派手に見えても、その裏でドライバーが“自然ではない制御”に追い込まれているのなら話は別だ。
ランド・ノリスは危険性をストレートに言語化した。速度差が大きい状況が生まれうる以上、接触したときの被害が跳ね上がるという論点だ。
「時速30、40、50kmの速度差が出ることがある。あの速度差で誰かが誰かに突っ込んだら、クルマは飛ぶし、フェンスを越えるし、自分も、もしかしたら他の誰かも、ひどいダメージを負うことになる」
「そう考えるだけでも、本当に最悪だ」
要するに、バッテリー運用の都合で“急に遅い車”がコース上に出現し、その相対速度が事故の質を変えてしまうという懸念だ。面白さと危なさが同じ現象から出ているなら、運営側は放置できない。だからこそ、FIAとF1は次戦中国GPの後、データが揃った段階で改めて状況を評価し、必要なら規則側で介入する構えになっている。
ただし、彼らは「開幕前の拙速な修正」は避けた。FIAのシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスは、まず実戦データを取るという合意がチーム間であったと説明した。
「チームの全会一致の立場は、最初の数戦は現状の取り決めのまま行き、もう少しデータが揃った段階で見直すべきだ、というものだった」
「僕たちの意図としては、中国の後にエネルギーマネジメントの状況を見直すことだ」
「そのための“切り札”はいくつか持っている。開幕前に反射的に導入したくなかっただけだ。中国の後にチームと一緒に検討する」
検討され得る処方箋は、回生(エネルギー回収)と放出(デプロイ)のバランス調整、電気ブーストの上限調整、あるいは内燃エンジン側の出力寄与を増やして全体の均衡を取り戻す、といった方向性だ。いずれも“思想そのもの”を壊さずに、現場で起きている弊害を削る発想になる。
一方で、チーム代表たちは「直すなら慎重に」と釘を刺す。ウィリアムズ代表ジェームス・ボウルズは、下手に触って悪化させる危険を強調した。
「最悪なのは、変えてしまって、もっと悪くすることだ」
メルセデス代表トト・ヴォルフは、議論の軸足を“ファンにとってのプロダクト”へ置き直した。過去を美化して結論を誤るな、という戒めでもある。
「ドライバーたちが以前のクルマを褒めちぎって、『最高のクルマだった』と言っているのは聞かなかった」
「僕たちは過去を懐かしんで見がちだ。だが僕たちは全員、このスポーツの当事者だ。最高のショー、世界最高のクルマ、最高のドライバーが必要だし、ファンにとってワクワクするものでなければならない」
「だから僕たちは“プロダクト”を見なければならない」
