メルボルンの開幕戦は、メルセデスが“勝った”という事実以上に、勢力図の読み違いを誘うレースだった。ジョージ・ラッセルが制し、キミ・アントネッリが続いて1-2。外形上はメルセデス完勝だ。だが、王者ランド・ノリスはそこで話を終わらせなかった。勝者の青銀ではなく、赤いマシンにいち早く「基準」を見た。

「僕らが見ている限り、フェラーリが明らかに一番いいクルマを持っていると思う。コーナリングスピードが信じられないくらいだ。」

ノリスの視点は、結果よりも“車体の素性”へ向いている。SF-26は、とくにコーナーでの速さが際立って見えたという。メルセデスがレースを支配した一方で、フェラーリの生のシャシー性能が週末序盤から無視できない存在感を放っていた、という見立てだ。

しかし、その言葉は同時にマクラーレンの現在地を残酷に照らす。ノリスは5位。トップから52秒遅れ、ルクレールからも36秒遅れでのフィニッシュだった。王者チームにとっては、言い訳の余地が薄い差だった。

「僕らは、必要な場所にまったく届いていない。明らかだ。でも多分、より根本はクルマ側だ。」
「(このレースは)クルマ面で、僕らがどれだけ遠いかをもっとはっきり示した。ものすごく、ものすごく遠い。やるべき仕事が山ほどある。(クルマを良くするのは)一晩で起きる話でも、1週間や2週間で起きる話でもない。」

差は「痛いほど」具体的だったという。ノリスはギャップを周回あたりのタイムに落とし込み、現実の重さをそのまま口にした。

「差がどれくらいだったか分からない。50秒? ほぼ1周あたり1秒遅れに近い。まあ実際そこまでではないにせよ、少なくとも1周あたり0.5〜0.6秒は遅れていると言える。いくらかはPUの理解の問題だ。でも、単純に“より良いクルマ”という部分もある。」

追い打ちになったのが、レッドブルの存在だった。予選トラブルで最後尾近くからスタートしたマックス・フェルスタッペンが終盤に迫り、ノリスの5位を脅かした。ノリスは、そこでレッドブルの“素の速さ”まで見抜いたと言い切った。

「レッドブルの方がかなり速かったのは、本当に分かりやすかった。マックスが最後尾から来て、ほとんど僕らに勝ちかけたんだから。」
「ペースという意味では良いレースではなかった。序盤、クルマにいくつか問題があった。調整を入れて、それで確かに良くなった。」