メルボルンの開幕戦でフェラーリは、シャルル・ルクレールが序盤に首位へ躍り出て、ルイス・ハミルトンも無線で判断を疑問視するなど、見どころの多いレース展開を作った。それでも結末はメルセデスの1-2で、フェラーリは3位と4位に終わった。敗因として真っ先に槍玉に挙げられたのは、11周目と16周目に出た2度のバーチャル・セーフティカー(VSC)でピットに入らなかった判断だ。パドックでは「入るべきだった」という単純な物語が広がったが、フレデリック・バスール代表はそこに同意しなかった。焦点は戦略ではなく、純粋な速さの差だったという主張だ。

VSCの1回目は、11周目にアイザック・ハジャーのマシンが止まったことで発動した。メルセデスは即座にラッセルとアントネッリを呼び込み、レースの地図を書き換えにいった。一方のフェラーリはステイアウトを選び、ハミルトンは無線で異議を唱えた。

「少なくとも、僕らのうち1台は入るべきだった」

追い打ちをかけたのが16周目の2回目のVSCだ。ここでもフェラーリは入らず、しかもタイミング悪くピット入口がクローズされて、後追いの選択肢すら奪われた。バスールはこの場面を「運が悪かった」と表現し、決定的ミスというより偶然の要素が大きかったと位置づけた。

ただし、バスールが強調したのは「運」よりも「現実」だった。メルセデスが早めに動いたのは、彼ら自身も当初は再度ピットに入るつもりだったからだという。ところが実際にはタイヤが想定以上に持ち、ワンストップが成立する方向へ状況が変わった。バスールはその意外性をこう説明した。

「起きたことは、メルセデスはもう一度ピットに入るつもりだったということだ。僕らは全員、タイヤがあれほど持ったことに驚いた。あれなら、350周だって走れたはずだ」
「そこから先は、彼らがそのアドバンテージを生かせるようになった」

フェラーリはルクレールが25周目、ハミルトンがその3周後にピットへ入った。しかし、勝負を分ける局面はすでに過ぎていた。バスールが繰り返したのは、戦略の正誤ではなく、区間ごとのペース差だ。

「現実的に見れば、昨日の時点で彼らは僕らより0.8秒速かった」
「レースのこの段階で、誰もワンストップになるとは予想していなかった。僕らは僕らにとっての最適を狙った。最適は、スティントを伸ばすことだった」
「問題は戦略判断ではない。純粋なペースだ」

さらにバスールは、序盤にラッセルと激しくやり合えた事実が「勝てたはず」という根拠にはならないとも言う。むしろ、前半でタイヤを使ったことが後半の持続力を削った可能性を示唆した。

「メルセデスのペースは僕らより良かった。彼らがピットに入ったあとでも、彼らは僕らより0.3〜0.4秒速かった。彼らはそのペースをスティントを通して維持した。もちろん、序盤はもう少し戦えたかもしれないが、そのぶんタイヤを押し込みすぎたのかもしれない」

結果としてフェラーリは3位と4位。トップから約16秒遅れという数字は、表彰台は確保しつつも、勝負権には届かなかった現実を突きつける。だからこそバスールは、後悔よりも次戦へ意識を切り替える姿勢を明確にした。

「戦略に後悔はない。今日のペースにも後悔はない。僕らは昨日と比べて別のことをした。そして今は中国に集中しよう」