アストンマーティンの開幕週末が、いきなり綱渡りになった。メルボルンのアルバート・パークでアストンは、ホンダ製パワーユニットに起因する信頼性トラブルに見舞われた。FP1は2台ともガレージに閉じ込められ、走れても限定的だった。厄介なのは振動だけではない。週末残りで「使えるバッテリーが2つしかない」という事実まで浮上し、次に壊れれば決勝をスタートできない可能性すら出てきた。

この状況で重く響いたのが、アストンのチーム代表エイドリアン・ニューウェイの証言だ。問題を単発の不具合ではなく、ホンダの“復帰体制”そのものの不安として語った。アストンが提携を決めた時点で想定していたのは、レッドブルと組んで勝ってきた経験豊富な中核が戻った「実績ある集団」だった。しかし、ニューウェイが日本のさくら拠点を訪れた前後で見えてきたのは、別の現実だった。

「彼らが体制を作り直した時点で、(レッドブルと一緒にやっていた)元のグループの多くは、いま分かったことだが、解散してしまっていた。ソーラーパネルの仕事か何かに移っていたんだ」
「だから、作り直されたグループの多くは実質的にF1が初めての人たちだった。以前のような経験を持ち込めていなかった」
「それに、彼らが2023年に戻ってきた時は、エンジンにも予算上限が導入された最初の年だった。ライバルは21年と22年を、既存チームの継続性を保ったまま、しかも予算上限なしで開発を進めていた」

要するに、ホンダ側は“勝っていた頃の人材”が十分に戻らないまま新体制でF1に本格復帰し、さらに予算上限の導入タイミングで開発の自由度も相対的に不利になった、という構図だ。そしてアストンにとって致命的なのは、その把握が遅すぎた点だ。契約は2023年に結んでいるのに、首脳陣が「本当にそうなっている」と掴んだのは開発がかなり進んだ後だった。

「いや、僕らは把握できていなかった」
「僕らが本当に気づいたのは、去年の11月くらいだった。噂として、彼らが当初ターゲットにしていたパワーを開幕戦までに達成できないらしい、という話が出始めていてね。それで僕とローレンス(ストロール)、アンディ・コーウェルで東京へ行って話をした」
「その流れで、再スタートの時に元の労働力の多くが戻っていなかった、という事実が出てきた」

現場のドライバー側は、週末を戦うための最低限の“普通”すら取り戻せていない。フェルナンド・アロンソは、まずFP1のデータ解析が残っていると語り、体感としてはバーレーンから大きな変化がないと淡々と言った。ただし、走行が積めない現実がそのまま週末の準備不足につながっている。

「もちろん、僕らはまだFP1のデータを解析しているところだ」
「正直言うと、感触はバーレーンと大きく変わらなかった。でもFP1はホンダの問題で周回をあまり重ねられなかったし、FP2でもホンダの問題がいくつかあった」
「だから、週末のプログラムを少し取り戻す必要がある。明日はクリーンなFP3になることを願っている」

さらに刺さるのが「決勝をスタートできるのか」という問いに対する返しだ。ドライバー側の意思や準備ではなく、部品在庫という生々しい話に落ちる。トップチームを狙うプロジェクトが、開幕戦から“在庫確認”に支配される。この温度差が、今のアストンの危うさを象徴している。

「僕らは走る準備はできている。それよりホンダに聞くべきだ。在庫があるのか、という話だからね」