アストンマーティンの2026年シーズンは、開幕戦オーストラリアGPの金曜段階で、いきなり「完走以前」の問題に足を取られた。原因はバッテリーだ。チームがメルボルンに持ち込んだバッテリー4基のうち2基が、コンディショニング不良や通信系トラブルで使えなくなり、稼働できるのは車載の2基のみという綱渡りに追い込まれた。予備が1基もない状態で週末を走らねばならない。1回の故障が、そのまま週末全損につながり得る構図だ。
事態をさらに悪くしているのが、根っこに「振動」がある点だ。パワーユニットの不具合が断続的に走行を制限し、その背景として強い振動が続いている。しかも新たに、バッテリーとマネジメントシステムの内部通信にも問題が出たという。走れないだけでなく、走れば壊れるかもしれない。開幕戦でこれを抱えるのは、開発計画そのものが破綻しやすい危険な形だ。
金曜の走行量が象徴的だ。アロンソはFP1を走れず、FP2で限定的に周回したのみだった。ストロールも午前は3周にとどまった。つまりセットアップ作業以前に、ログを集める行為そのものが止められている。しかもアストンマーティンはこの週末に大きな新パッケージを投入している。通常なら、金曜に走って、挙動の癖と作動域を把握し、土曜に向けて最適化していく。しかし今は、その前提が崩れている。
技術責任者エイドリアン・ニューウェイは、状況の深刻さを隠していない。
「バッテリーの問題がずっと続いている。バッテリーとそのマネジメントシステムの内部通信で、新しい問題も起きた。ただ、もっと根の深い問題は、僕らが今も苦しんでいる振動の問題だ」
振動はドライバーの不快感だけでなく、信頼性の二次被害を連鎖させる。だからチームは「壊さないために走らない」という守勢に入る。しかし守れば守るほど、データが取れず、原因究明も進まない。悪循環だ。
「バッテリーは残り2基しかない。つまりクルマに載っている2基だけだ。どちらかを失えば、明らかに大問題になる。だからバッテリーをどう使うか、ものすごく慎重にならないといけない」
そして決定打が「補充できない」現実だ。日本の拠点から追加を送れないのか、と問われたニューウェイは、短く切り捨てた。
「残念だけど無理だ。ないんだ」
“ない”は最悪の回答だ。調達で時間を買うことすらできない。残された手段は、走行計画の極端な節約と、原因の当たりを付けて最短で手を入れることだけだ。だが走行を節約すれば、原因特定の材料も減る。ここでも循環が噛み合わない。ニューウェイ自身も、無力感を口にしている。
「ちょっと無力に感じるタイプの問題だ。僕らには明らかに重大なパワーユニットの問題がある。走れていないせいで、クルマについても分からないままだ」
ドライバー側の言葉は、状況の歪さを別角度から示す。アロンソは、供給体制への不満を抑えきれていない。
「僕はただクルマを運転するだけだ。もちろん、在庫がないのは残念だ。ホンダが1チームにしか供給していないなら、なおさらだ。でもこれが現状だ」
さらに金曜が「学びになっていない」ことも、はっきり言い切った。
「学びは多くない。FP1のホンダの問題と、FP2でもいくつかホンダの問題があって、今日の周回数が制限された。クルマを理解するために、少し取り戻す必要があったのに、それがまたできなかった」
ただしアロンソは、外野の論調が必要以上に悲観に振れているとも釘を刺す。
「僕らは、メディアや周りの人たちよりずっとネガティブじゃない。誰かがうまくやっている時や、誰かが間違ったことをしている時に、物語として語るのは楽しいんだろう。人は両極端を誇張する」
それでも現実は軽くない。アロンソは最後に、課題の大きさを認めた。
「僕らは今の立ち位置を分かっている。目の前には大きな挑戦がある。でもチームの全員が、この状況から抜け出すために、できるあらゆる形で挑戦を受け入れている」
