中東情勢の緊迫が、F1の足元にも届いた。週末に起きた軍事衝突の急激なエスカレーションを受け、バーレーンで予定されていたピレリのタイヤテストが中止になった。開幕戦メルボルンへ向けてパドックが動き出すこのタイミングで、移動計画そのものに影を落とす事態になった。
発端は、米国とイスラエルがイランを標的に行った共同軍事作戦だ。米国大統領ドナルド・トランプはこれを「大規模な戦闘作戦」と位置づけた。直後、イランは報復としてミサイルとドローンで地域一帯を攻撃したとされる。中でも衝撃が大きかったのは、バーレーンにある米海軍第5艦隊の施設がミサイル攻撃を受けたという報道だ。F1にとってバーレーンは“いつもの開催地”ではなく、シーズンの根幹を支える重要なレース開催国だ。そこで安全の前提が揺らいだ事実は重い。
この週末、バーレーン・インターナショナル・サーキットでは、ピレリが2日間の開発テストを予定していた。メルセデスとマクラーレンがテスト用のマシンを用意し、人工的に路面を濡らしてウエットタイヤの評価データを集める計画だった。派手さはないが、雨用コンパウンドの開発はシーズンを通して効いてくる。つまり、地味に見えて重要な仕事だった。
しかしサーキットは沈黙した。攻撃の連鎖と各地の空域閉鎖が重なり、治安上の理由でテストは中止になった。中東の主要な乗り継ぎ拠点を含む地域の空域が不安定化すれば、現地にいるスタッフの安全確保も、脱出計画も、すべてが一気に難しくなる。
ピレリは声明で中止を認めた。
「バーレーン・インターナショナル・サーキットで本日と明日に予定されていた、ウエットコンパウンドの開発テスト2日間は、変化し続ける国際情勢を受け、安全上の理由で中止になった。」
さらに、現地スタッフの状況にも触れた。
「現在マナーマにいるピレリの全スタッフは、ホテル内で安全を確保している。会社は安全確保を最優先し、可能な限り早くイタリアと英国へ帰国できるよう手配を進めている。」
差し迫った危機があるのはテストだけではない。F1は今週末の出来事を「メルボルンへ行けば関係ない話」として片づけられない。なぜなら、パドックの移動の現実は“飛行機の経路”に支配されているからだ。スタッフも機材も、多くが中東のハブ空港を経由して動く。空域が揺れれば、いつもの最短ルートは一瞬で無効になる。開幕戦に間に合わせるための移動が、急に難易度を上げる可能性がある。
F1側は、次の3戦が中東から離れている点を強調しつつ、状況を注視していると述べた。オランダメディアへのコメントとして、次のように伝えられている。
「次の3レースはオーストラリア、中国、日本で、中東ではない。これらのレースはまだ数週間先だ。いつも通り、こうした状況は綿密に監視し、関係当局と緊密に連携している。」
