F1の新世代パワーユニットを巡ってくすぶっていた圧縮比論争が、開幕直前に一気に決着へ動いた。FIAは2026年パワーユニット規則の改定を承認し、ライバル陣営がメルセデスの“抜け穴”だと疑っていた論点を封じ込めた。
争点は、2026年規則で定められた最大16:1の圧縮比だった。これまでの文言は「冷間・外気温(常温)で測定する」ことを前提としており、ライバル側は「運転時の高温状態で熱膨張を利用し、実質的に上回る余地がある」と見ていた。FIAはこの疑念が抗議合戦に発展する前に手を打った格好だ。
FIAは世界モータースポーツ評議会(WMSC)の電子投票で、2026年F1規則改定が全会一致で承認されたと発表した。さらに一部の技術規則改定は、PUメーカー側も全会一致で同意したとしている。
「2026年FIAフォーミュラ1規則の改定は、世界モータースポーツ評議会の電子投票により全会一致で承認された」
「改定の一部は、F1パワーユニットメーカーによっても同時に全会一致で承認された。技術規則の変更は、バルセロナとバーレーンでのプレシーズンテスト後に、ドライバーとチームから受けた幅広いフィードバックを踏まえたものだ」
焦点の圧縮比についてFIAは、妥協案として運用条件を段階的に切り替えると説明した。2026年6月1日からは「冷間と高温の両方」で管理し、2027年以降は「運転状態(130℃)のみ」で管理する。導入時期は当初8月が想定されていたが、6月1日に前倒しされた。
「圧縮比という課題の解決には大きな努力が注がれた。このパラメータは、新規参入を呼び込むために設定された重要目標の一つであり、規則上16:1に制限され、冷間条件で測定されてきた」
「FIAは妥協案を見いだした。圧縮比は2026年6月1日から高温・冷間の両条件で管理し、2027年以降は運転状態(130℃)のみで管理する」
「2026年の規則は近年でも最大級の変更だ。大きな規制変更の導入にあたり、プレシーズンテストと2026年選手権序盤から、全体として学ぶべき点がある」
「エネルギーマネジメントに関する追加評価と技術チェックは継続している」
メルセデス陣営の反応も揺れたとされる。報道では当初、チーム代表トト・ウォルフが「途中で変えれば自分たちが損をする」と強い不満を示した一方、他メーカーの圧力が強まるにつれ、対立の長期化を避ける方向へ舵を切ったという。
「最初から言ってきたが、これは結局“コップの中の嵐”みたいなものだ」
「もし噂されていた数字が本当なら、誰かが必死に止めようとするのも理解できる。でも最終的に、戦う価値がない」
「僕らにとっては、このままでも新しい規則に変わっても何も変わらない。だから大きな違いはない。スポーツの良き一員でいたいだけだ」
「哲学的には反対もできる。規則は作られるもので、FIAを近くに置くべきだと思うし、それが本来の姿だ」
「でも他のPUメーカー4社がある段階でFIAに強い圧力をかけたなら、僕らに“参加しない”以外の選択肢があるのか」
「金曜のメルボルンで抗議が起きても平気なくらい僕らは落ち着いていた。だが、それが本当に望む姿なのか」
結果として、開幕直前に最も政治的な火種になり得た技術論争は、前倒しのルール運用で沈静化した。とはいえ、レギュレーション転換期のF1では、技術の解釈と境界線を巡る綱引きが消えることはない。今回の決着は“次の争点”までの猶予にすぎない可能性がある。
