ゼネラルモーターズ(GM)とダン・トーリス率いるTWGグローバルが進めるキャデラックのF1参戦計画が、初グランプリを迎える前に“10億ドル規模”へ膨らんだと伝えられている。アウディがザウバーの既存インフラを取り込む形で「近道」を選んだのに対し、キャデラック陣営は事実上ゼロから組織を立ち上げてきた。結果として、参戦準備のコストは想像以上のスピードで積み上がっているとされる。
その規模を具体的に語ったのは、F1解説者ウィル・バクストンだ。ポッドキャスト番組でバクストンは、キャデラックがまだ実戦で「一度も本気でタイヤを転がしていない」段階にもかかわらず、すでに10億ドルを投じたと見られていると述べた。さらに、その費用は「グリッドに並ぶためだけ」のもので、しかも現時点ではタイトルスポンサーがいない点を強調し、参戦計画がキャデラック/GMだけでなく、TWGや背後の投資家グループにとっても巨大な財務負担になっていると示唆した。
「最初に基準線を引いておこう。彼らはすでに、しかもまだ本気で走り出してもいないのに、10億ドルを使った」
「それが、現時点までに使ったと見られている金額だ。あくまでグリッドに並ぶためだけの費用だ。しかもタイトルスポンサーがいない」
「つまりこれは、キャデラックとゼネラルモーターズだけでなく、TWGやダン・トーリス、舞台裏でこのチームを立ち上げているグループ全体にとって、途方もない事業だ。莫大な財務負担だ」
記事は、この“10億ドル”がキャデラック側から公式に確認された数字ではないと断りつつも、計画の巨大さを象徴する数字だと位置づけている。拠点は米インディアナ州フィッシャーズ、ノースカロライナ州シャーロット、ミシガン州ウォレン、そして英国シルバーストンにまたがり、4つのハブを2大陸に展開する「新興F1チーム」だという。野心的であることは間違いない一方で、運用が最適化されているかどうかは別問題だと論点を移していく。
バクストンはとりわけ、体制の複雑さが生む“摩耗”に触れた。新規参戦チームにとって複数拠点運用は効率的とは限らないとし、さらに「米国の働き方」と「F1の容赦ない文化」が重なることで、組織が消耗しやすい構造になりうると語った。英国拠点のスタッフは日中に働いた後、米国側が動き出す時間帯にも対応せざるを得ず、結果として睡眠が削られるという見立てだ。
「3つの拠点を持つのは、どんなチームにとっても最適化された戦略とは言いにくい。まして新チームならなおさらだ」
「キャデラックがアメリカのチームとしてどう戦うかについて、2つの問題があると思う」
「1つはアメリカの労働文化だ。休みはない。働き続けて、擦り切れるまでやる。家族?家族って何だ。働くんだ」
「もう1つはF1のメンタリティだ。嫌なら別のことをやれ。若くて安い人材はいくらでも見つかる。やりたくない、あるいはやる気がない仕事は、誰かが代わりにやる」
「英国を拠点にしているなら、一日中働いて、その後はアメリカが起きるまで夜の大半も働くことになる」
「そうすると睡眠は3時間だ。しかもシーズンはまだ始まっていない」
「僕の知る人で、この素晴らしい新事業に移った人たちから聞いた話では、チームは疲れ切っている。もう限界だ。シーズンはまだ始まっていないのに」
