アルピーヌのピエール・ガスリーが、来月のオーストラリアGPのスタートは「記憶に残るものになる」とF1ファンに警告した。2026年の大規模な技術レギュレーション変更が、発進の難易度を一気に引き上げ、近年のF1では珍しいレベルの混乱を招く可能性があるという見立てだ。
混乱の根にあるのは、新パワーユニットからMGU-Hが外れた点だ。これまでターボ回転を“電気的に整える”役割を担っていた要素が消え、ターボの準備は内燃機関側の扱いに大きく依存する構図になった。結果として、ドライバーは発進前に高い回転数をより長く維持する必要が生まれ、ミスがそのまま失速、反応遅れ、アンチストール作動などにつながりやすくなったという。
空力面でも不安は強い。マクラーレンのオスカー・ピアストリは、ターン1の状況を端的に危険視した。
「22台の集団が、ダウンフォースが数百ポイント少ない状態になるって話だ。僕には“災害のレシピ”に聞こえる」
ガスリー自身は、恐怖を煽るよりも“面白さ”として捉えつつも、見逃すなと強く言い切った。
「オーストラリアでは、テレビをつけて席に座っておいた方がいい。みんなが覚えているレースになるかもしれない」
「どうなるかは分からない。僕自身も確信はない。でも、これまでより確実に難しくなる」
さらにガスリーは、チームがいずれ最適解を見つけるのは当然だとしながらも、第1戦までに完成形へ持ち込むのは難しいと見ている。
「でも現状だと、テスト2週間を終えただけの段階でも、オーストラリアで簡単にならないのは見えている」
問題は発進だけにとどまらない。ガスリーは、完走そのものが早い段階の最優先課題になる可能性を示した。
「ただ、それも“課題リスト”の一部にすぎない。ほかにも簡単じゃない状況がたくさんある」
「だからオーストラリアでは、信頼性と完走が“挑戦の第一”で、“優先の第一”になると思う」
「言っていることは単純に聞こえるだろう。でも、前の世代のクルマなら、こんな話はしてこなかった。今のクルマはとてつもなく複雑だ」
後方グリッドのドライバーにとっては、状況がさらに過酷になる可能性も語られた。後ろの位置ほどスタート手順に割ける時間が限られ、規則変更がその差を拡大させかねないという指摘だ。一方でハースのエステバン・オコンは、形式自体を変えるべきではないと主張した。
「同じやり方のままでいてほしい」
「もちろんチームと一緒に取り組んでいる。ターボラグは大きなテーマなのは明らかだ。でも僕らはルールに適応するしかない」
「それに、トップ3が1分30秒も待って、全車が止まるのを待つ形は良くない。ターン1に向かうタイヤが冷えた状態になるからだ」
オコンは、スタートの“失敗コスト”が以前より極端に跳ね上がると見ている。
「スタートで苦しむ場面はもっと増えるし、これまでの年より差が大きくなると思う。昔は一番悪いスタートでもグリッドで1つか2つ落とすくらいだった。でも今は“全部落とす”こともあり得る」
「だから一歩ずつ改善している。まだ序盤だ。残念ながら(バーレーンは)スタート練習に向いたコースでもない。グリップが低いから、エンジンには助けになる」
「でも興味深いよ。昔のラリーカーや、単純なターボの古いクルマみたいに、簡単に回して立ち上げられる感じじゃない。僕らドライバーの操作が、そこに大きく効いているとも言いにくい。不思議な感覚だ。でも全員同じ条件だと思う」
