バーレーンで始まったプレシーズンテスト初日、ルイス・ハミルトンはF1の次世代マシンについて、初めて踏み込んだ所感を語った。扱いやすさや楽しさを認める一方で、肝心の速さには不満をにじませ、さらに新しいエネルギー管理システムの複雑さにも強い違和感を示した。
ハミルトンの初日の走行は穏やかではなかった。強い砂漠の風の中でフェラーリの新車を手こずらせ、コースアウトも複数回あった。さらに一度は360度スピンも喫し、立て直してピットへ戻った。セッションを終えると、基準タイムを刻んだマックス・フェルスタッペンから1秒遅れとなり、フェラーリ側にも、そして本人にも“やるべき作業が山積みだ”と示す形になった。
それでもハミルトンが最初に強調したのは、クルマのキャラクターが従来と大きく変わった点だった。ただし、その変化は手放しで歓迎できるものではない。楽しさはあるが、速さが足りないという矛盾を、本人がはっきり口にした。
「フロントもリアも、ダウンフォースがかなり減っている」
「クルマは短くなって、軽くなって、立て直しやすい。かなり楽しい。ラリーをしているみたいな感覚が強い」
「でも、今の僕らはGP2より遅いよね? そう感じるんだ」
“楽しいのに遅い”という評価は、パドックの議論を一気に熱くする類の言葉だ。記録やポールの常連であるハミルトンにとって、速度感の後退は素直に飲み込みづらい。反応が良くなった手応えはあるが、速さの物足りなさが後味を悪くしている構図だ。
もっとも、ハミルトンはその場の条件と開発段階を理由に、断定を避けた。風は強烈で、マシンはまだ初期段階だ。セットアップの“おいしい領域”も見つけきれていないという認識だった。
「今の時点ではそう思わない」
「(フェラーリの新車が)僕のドライビングスタイルに合っているかどうかなんて、まだ分からない。前の世代の“ジャンル”とはまったく別物に感じる。今は本当に早すぎる段階だ」
「いま僕らが持っているベースのクルマで、いろいろなことを大量に試している最中だ。どの領域でうまく動くのか、その“窓”を探している」
「タイヤも最適化できていないし、エアロパッケージも最適化できていない。車高もメカニカルバランスも、いろいろな要素がある。だから今の段階で判断はしない」
「今日は風がひどくて、走っていて気持ちよくなかった。ここで僕が覚えている中でも一番の突風だったと思う。これは割り引いて考えないといけないし、そもそも初日だ。午前中はいつだって楽しくない」
「でも全体としては、前のテストでも言ったけど、運転していて楽しいクルマになっている」
結局のところ、ハミルトンの言う「楽しい」は、現時点で「強い」と同義ではない。どのチームも、技術レギュレーションの激変の中で、勝てるセットアップの核心を探している段階だ。
そして不満は速度だけに留まらなかった。ハミルトンがより強い言葉を使ったのは、2026仕様のエネルギー管理の複雑さだった。観客が理解できない水準に達しているという問題提起だ。
「ファンは誰も理解できないと思う。複雑すぎる」
「とんでもなく複雑だ。この前のミーティングで説明を受けたけど、全部を理解するには学位が必要なレベルだ」
「ただ、マネジメント自体はかなりシンプルだと思う。レース仕様だと違ってくるかもしれないけど、それは見てみないと分からない」
「それに、1周を終えるたびにシステムが自動で学習して、僕の運転のしかたを取り込む仕組みもある」
「例えばロックアップしてコースアウトしたら、走る距離が増える。そのぶんアルゴリズムにも影響が出る」
「だから僕らは、それを理解して手の内に入れようとしているところだ。でも全員が同じ状況にいる」
