F1がバーレーンでプレシーズンテストを再開すると、アウディが初日のサキールで強烈な存在感を示した。投入したR26は、シェイクダウン仕様から大きく姿を変え、パドックの技術関係者を騒然とさせた。
水曜朝にガレージから現れたマシンは、2週間前にバルセロナで非公開の場に出ていた「安全志向」のローンチ仕様とほとんど別物だった。最大の変化は車体中央部、サイドポッド周辺だ。これまでの2026年型の潮流に合わせた幅広い吸気口は姿を消し、代わりに、シャシーに沿うように絞り込まれた、縦に立ち上がるような細身のコンセプトへ切り替えた。
見た目のインパクトは即座に広がった。関係者の間では、2022年のグラウンドエフェクト導入期にメルセデスが試した「ゼロポッド」を思い起こすという声が出た。あの設計は後に苦戦の引き金にもなったが、アウディは新しい2026年レギュレーション下で、この“極細”思想を成立させる鍵を握っていると考えているようだ。
狙いは明確だ。ボディワークを大幅に絞り、後方へ向かう気流をよりクリーンに整える。空力面の上積みを求める一方で、冷却面の難しさという代償を抱える可能性も高い。アウディはそのリスク込みで、空力的な「Vorsprung(先進性)」に賭けた格好だ。
しかも変更点はサイドポッドだけではなかった。マッティア・ビノット率いる技術陣とデザイナーのジェームズ・キーのもと、水曜の走行には新しいフロントウイングも投入された。カメラが集まる段階まで“本命のパッケージ”を温存していたのではないか、という見方も出てくる。
改良版R26の最初の担当はガブリエル・ボルトレトだった。午前に新しい冷却と空力の成立性を走行で確認し、午後はニコ・ヒュルケンベルグへ引き継いだ。マクラーレンのように「メルボルン仕様がほぼ固まっている」と示唆するチームもある一方、アウディの進化速度を見る限り、現在のR26もまだ作業途中と考えるのが自然だ。
来週2月18日から20日には、追加の3日間テストも控える。アウディは新時代の“技術的ワイルドカード”として、すでに十分な爪痕を残した。細身ボディの賭けが表彰台へつながるのか、それとも検証の場で解剖される結末なのかはまだ分からない。だが少なくとも、アウディを「ただの新参者」と見なす空気は消えた。
