アップルが、米国におけるF1の独占放映権者として本格始動する構えだ。単なる中継にとどまらず、Apple Newsやスポーツアプリ、Apple Music、さらには全米のApple Storeまで使い、F1を「どこにいても目に入る存在」に押し上げるという発想だ。狙いは、視聴の入口を増やし、ライト層の関心を継続的なファンへ変換することだ。

この戦略を語ったのは、サービス部門トップのエディ・キューだ。彼は“どれか一つの媒体”ではなく、アップルの持つ接点すべてを束ねてF1を拡散させる方針を明言した。

「僕らはアップルが持っているもの全部を活用するつもりだ」
「Apple Newsもある。人々が使っている優れたスポーツアプリもある。音楽もある。音楽はF1の大きな要素だ。あらゆる接点がある」
「米国の主要都市すべてにリテールストアがある。僕らはアップルが持つすべてを総動員する」

キューは、Apple Original Filmsが手がけた『F1』映画の存在も、F1への入口を広げた要因だと位置付けた。映画で初めてF1に触れた層へ「次はレースが見られる」と直接告知できることが、放映権獲得の価値を押し上げたという理屈だ。

「『F1』映画そのものも、もう一つの大きな要因だった」
「あれで初めてF1に触れた人がたくさんいた」
「僕らは映画を見た人が誰なのか分かっている。だから今度は、レースが見られるようになったことを彼らに知らせる」
「これは大きなチャンスだ」

勝負どころは“到達範囲”だけではない。キューは映像体験そのものを刷新すると断言し、4K映像を「一般的なレベルまで圧縮しない」ことで、見た瞬間に違いが分かる品質を出すと語った。さらに、レースだけでなく「チームを追う」導線をボタン一つで提供し、好みのチームのデータへすぐ入れる設計を示唆した。

「最初に目にするのは、今まで見たことのない映像品質になるはずだ」
「僕らは4Kを扱うが、一般的に慣れているレベルまで圧縮しない」
「だから初めてチューニングした瞬間、『うわ、こんな4K見たことない』となる」
「ボタン一つで、レースだけでなくチームも追えるようにする。好きなチームのデータと一緒にだ」

加えて、iPhoneを“これまで置けなかった場所”へ設置する構想にも触れた。映画制作で得た「見せ方」の学びを中継へ逆輸入し、ドライバーというアスリートの身体負荷が伝わる角度や、Gの凄まじさを体感させる映像表現を狙うという。

「僕らはiPhoneを、今まで置けなかった場所に置いていくつもりだ」
「映画から学んだことの一つは、カメラアングルの違いだ。ドライバーがいかに凄いアスリートかを見せられる」
「彼らが受けるG、2時間にわたってあの速度で走らせる難しさ。信じられないほどだ」

映画の“次”についても話題は及んだ。キューは続編への期待をにじませつつ、アップルとして映像作品の供給が厚いことも冗談交じりに口にした。

「そうなるといいね。1作目はかなり良かった」
「でも良いニュースとして、今年は24本の映画が控えている」

一方、F1のCEOステファノ・ドメニカリは、熱気を認めながらも一段慎重だった。成功を“消化”したうえで、もし新作を考えるなら「本当に、とても、とても良いもの」でなければならないという立場だ。時期についても、少なくとも来年すぐではないと釘を刺した。

「続報を待ってほしい」
「今後、もう少し何かを話せるようになる」
「“絶対にない”とは言わない。ただ、まずはこの映画の成功を消化する必要がある。これは特別な出来事だからだ」
「新しいものを考えるなら、本当に、とても、とても良くなければならない」
「だから、もし起きるとしても来年にはならない」
「ただ、来年またここ(Apple TVの夏のプレビュー)に僕らがいるかもしれない」
「そこで何か発表できるといい」