アストンマーティンが2026年型マシン「AMR26」を、バルセロナ=カタルーニャ・サーキットでついに走らせた。2026年の新レギュレーション下で、エイドリアン・ニューウェイが技術責任者兼チーム代表として初めて形にした一台だ。公開されたのは木曜午後。残り走行時間が1時間ほどという土壇場で、ランス・ストロールがオールブラックのホンダ搭載車をコースに送り出した。メカニックは前夜から当日まで作業を続け、ぎりぎりで“間に合わせた”格好だった。
ただし初走行は長く続かなかった。ストロールはわずか5周でコース上に止まり、停止理由は明かされていない。それでも、短い周回が残した印象は強烈だった。AMR26は、サイドポッドに強いアンダーカットを与え、エアボックス吸気は高く鋭い。さらにエンジンカバーは異様に絞り込まれ、新パワーユニット規則の下で空力効率を最大化しようとする意思が透ける。
足回りも、その狙いを補強する。AMR26は高い位置にプッシュロッド機構を置いているように見える。乗り味のためというより、開発初期に見つけた“ボトルネック”を除去し、極端なアンダーカット・サイドポッドが呼吸できる空力の通り道を確保した、という読みが成り立つ。走行周回が少なく評価はまだ不可能だが、見せた造形言語は明快だった。大胆で攻撃的で、そしてニューウェイの匂いが濃い。
この“初走行”を、現場の責任者マイク・クラックは感情の節目として語った。マシン到着は水曜夜に「少し遅れた」が、現地時間17時にピットレーンへ出ていく姿はチームに高揚をもたらしたという。クラックはF1公式に対し、初走行の瞬間をこう振り返っている。
「新車のときはいつもそうだが、感情的になる。とてもワクワクする瞬間だ。この数日間で、本当に多くのハードワークを注ぎ込んだ。やるべきことはまだ山ほどあるが、今日はひと息ついて、マシンを走らせられたことを喜んでいいと思う。言った通り、本当に感情的だった。チームにとっていい瞬間で、みんなが注いだハードワークへの賛辞でもある。F1は容赦がない。常に前を見なければならない。これからさらに多くのハードワークが待っているが、それを楽しみにしている」
背景にあるのは、単なる新車投入ではない“体制の総入れ替え”だ。アストンマーティンはホンダを新たなパワーユニットパートナーとして迎え、さらに長年ぶりに自社製ギアボックスの製造にも踏み込む。そこにシャシー規則もPU規則も一気に変わる2026年が重なる。クラックは、この状況を「ユニーク」と表現し、変化の大きさを率直に認めた。
「僕たちは明らかに少しユニークな状況にいる。新しいパワーユニットパートナーとしてホンダを迎え、何年もぶりに最初のギアボックスを自分たちで作った。そこに新しいシャシー規則、新しいパワーユニット規則が重なる。つまり、最悪のケースとも最高のケースとも言えるが、僕たちにとってはワークスチーム、ファクトリーチームになるための巨大な変化だ。この規則変更と一緒に進めていく。さらにエイドリアンも加わった。とてもエキサイティングで、変化が多い。F1は待ってくれない。だから準備が必要だ。今回は少し遅れたが、このテストには間に合った。これは誇っていい達成で、喜ぶべきだと思う」
そして“ホンダとの統合”は、ここからが本番だという。長く組んだ以前のパートナーから切り替える以上、人を知り、仕事の進め方を合わせ、期待値と責任分界を揃える必要がある。クラックは手応えも口にし、同時に現実的な作業量を示した。
「(ホンダとは)当然まだ新鮮だ。前のパートナーと長い関係があったときはなおさらで、人を知り、名前を覚え、どう協働するか、期待は何か、責任は何か、そういうこと全部を学ばなければならない。だが良いスタートだった。僕たちと彼らの間に笑顔もあった。今の時間をできるだけ統合に使い、どう一緒に働くかを学ぶのが目標だ。僕はとても自信がある。彼らはレーサーで、とてもオープンだ。こちらから挑んでいける。すごくいいし、この関係を続けていくのが楽しみだ」
