F11ではここ数カ月、2026年の大規模なレギュレーション刷新でメルセデスが「勝ち札」を握っているのではないか、という噂が絶えなかった。2014年のパワーユニット(PU)時代の幕開けで圧倒したのだから、次も同じことが起きる。理屈は単純だった。

だが、その筋書きに水を差す不穏な噂が浮上した。ブラックバックリー、そしてより具体的にはブリクスワースの現場が、胸を張るどころか神経質になっているかもしれない、という話だ。

メルセデスのPU部門は通常、効率と統制の象徴として語られる。ところが元F1ドライバーのジョニー・ハーバートは、「開発の最初の基本動作」で躓いている可能性を示す、気掛かりな兆候を耳にしたという。新PUを車体に搭載して“火を入れる”段階で問題が出ている、というのだ。

「まだどのチームからも具体的な話は聞いていない。だが、メルセデスがPUをマシンの後ろに載せて始動させようとしたとき、エンジンがかからなかったという話は耳にした」

ハーバートは、2026年に向けたメルセデス優位の空気が先行し過ぎていた可能性にも触れた。

「メルセデスが2026年に向けて最も良い位置にいるという噂があったが、どうもそうではなさそうだ」

もっとも、これで即座に結論を出すのは危険だとも釘を刺した。今の時期は、どのファクトリーも表に出さずに問題を潰している。外から見えない場所で「小さな火事」と戦うのが常だ、という見立てだ。

「ファクトリーからの情報は概して静かだ。各チームは頭を下げて、できる限り準備を進めているはずだ」
「新しい年に、新車に、新しいルールで入っていくのだから、いつも通り細かな問題は山ほど出るはずだ。未知が多い」
「ファクトリーでテストしている状態と、サーキットで実際に走る状態ではまったく違う」

もしメルセデスがPU由来の厄介事を抱えるのだとすれば、その影響を最も強く受けるのはジョージ・ラッセルだろう。チームが前線に返り咲けるかどうか、その中心に立たされる存在だからだ。

一方でハーバートは、たとえ序盤に不安材料があったとしても、ラッセルが背負う役割を果たせると見ている。チームメイトに座る若手キミ・アントネッリの台頭が、ラッセルを押し上げる要素にもなり得る、という構図だ。

「ジョージ・ラッセルは、メルセデス復活の鍵になる。チームはもう一度、最前線に戻りたいと思っている」
「ジョージは、キミ・アントネッリに突き上げられることで、さらに良くなれるはずだ」

さらに、両者の差を“安定感”に見ている。

「いまの競争力を分けている最大の要素は安定感だ。ジョージはとても安定している一方で、アントネッリはまだそうではない」

経験と若さの組み合わせは、最終的に双方の利益になるという。アントネッリが伸びること、そしてトト・ヴォルフの後押しを得ていることを、ラッセルが当然理解しているとも語った。

「経験と若さの良いミックスだ。結局は二人にとってプラスになる」
「ジョージは、アントネッリが成長していくことも、トト・ヴォルフの後ろ盾があることも分かっているはずだ」
「ただ、正しいクルマさえあれば、ジョージはチャンピオン争いができると思う」