マクラーレンのザク・ブラウンCEOは、近年のF1で「ミノー(小魚=弱小チーム)」が見当たらなくなったと語った。コストキャップ(予算上限)の定着によって、かつてのような“明確な格差”は薄れ、最下位のチームでさえ勝負できる土壌ができたという。

ハイブリッド時代の幕開けは、マクラーレンにとって順風満帆ではなかった。ホンダとの船出は苦戦を強いられ、その後ルノーで持ち直したものの、メルセデスへのスイッチで一気に浮上したわけではなかった。問題はパワーユニットではなく、主にシャシー側にあったとされる。

試行錯誤を重ね、改定レギュレーションの下で2023年に光が差し始めた。そして2024年、マクラーレンは一気に頂点へ駆け上がり、コンストラクターズタイトルをレッドブルから奪取。さらにシーズン最終戦でフェラーリを下し、決定打を打った。勢いは止まらず、2025年もコンストラクターズ王座を守り、ドライバーズタイトルまで手にした。

この復活劇の中心にいたのがブラウンだ。周囲から指摘も浴びたが、アンドレア・ステラに指揮を託し、技術組織を整える強い推進が、結果としていまの成功へつながった。

「つまり、僕たちがいた場所からここまで来る道のりは、本当に驚くべき探求だった。コース上だけでなく、コース外でも同じだ」
「僕たちの株主、とりわけムムタラカトのコミットメントは、初日から信じられないほどだった。彼らが求めているのは、勝つこと、強いブランドを築くこと、そして人を大切にすることだけだ」
「僕たちが人を大切にしているからこそ、いまの結果があるんだ」

ブラウンは、スポンサーの強力な支援、株主と会長からの全面バックアップが、チームの意思決定と現場の集中を可能にしたとも強調した。

「僕たちには信じられないスポンサーがいる。株主の全面支援もあるし、会長の支援もある。だからアンドレアと僕たちリーダーシップは、レギュレーションの範囲内で頭を下げて仕事に集中できる」
「それがF1の刺激的なところだ。また全部やり直しになる。2025年はレギュレーション自体は大きく変わらなかったが、僕たちのマシンは多くを変えた。技術チームは立ち止まらなかった」

さらに、勝てる組織は技術陣とレースチームだけで成立しないとも言う。財務、人事、商業、広報、スタッフ統括など、舞台裏の複雑な歯車が噛み合って初めて、現場に「勝つための道具」と「資源」と「人」が行き渡るのだと語った。

「技術チームと同じように、僕たちのリーダーシップチーム、CFO、人事責任者、商業チーム、広報責任者、スタッフ統括……みんなが素晴らしい仕事をしなければならない」
「F1チームの複雑さは、技術チームとレースチームを勝てる位置に置くために、裏側で膨大なことが動いている。彼らにツールと資源、そして“人”を与えるためにね」

そしてブラウンは、2026年の新レギュレーションを見据え、「また最初から」になると締めくくった。しかも、いまのF1はコストキャップによって戦力が均され、昔ながらの“弱小”が消えた。だからこそ、再び頂点に立つ道は険しいという。

「いま僕たちは、もう一度全部やり直さなければならない。そして厳しくなる。僕が言っているように、F1で最も弱いチームですら本当に強いからだ」
「ドライバーの競争だけじゃない。チーム同士の競争も同じだ。もう小さなチームは存在しない。僕たちが育った時代にいたような“ミノー”のチームはいない。みんながコストキャップの中で走っている。スポーツは信じられないほど健全だ」