7度の世界王者ルイス・ハミルトンは、スピードと技術、そして鋼の神経で勝利を積み重ねてきた。だが40歳を迎えたいま、彼が勝っているのは別の戦いでもある。ハミルトンの武器は規律だ。そして苦しい儀式がある。

F1参戦20年目、そしてフェラーリ移籍2年目に入るハミルトンは、加齢とともに身体のルーティンがどう変わったかを明かした。かつての「勢いのフィットネス」は、いまや意図と設計のトレーニングへと変わった。衰えが許されない競技で、競争力を維持することが求められているからだ。

「以前とは変わり、進化しているんだ」

ハミルトンのトレーニングは、若い頃のような気ままさでは回らない。いまは毎朝、同じ順番で始まる。ストップウォッチではない。

「僕はいまでも走るのが好きだ。今朝も走った。距離はだいたい6〜8マイル(9.6〜12.8km)だ。そのあとにアイスバスだ。でもその前に、ベッドから出たらまずストレッチをするんだ」

「午後はHIIT(High-Intensity Interval Training:短時間で高負荷の運動と短い休憩または低負荷運動を繰り返すトレーニング法)をやることもある。でもウエイトはあまりできない。重くなりすぎるからね。だから基本はピラティスとヨガだ」

若さと基礎体力が多くを肩代わりしてくれた時代は終わった。いまは“長く戦う”こと自体を作り込んでいる。

ファッション、音楽、社会活動。レース以外にも予定が伸びるハミルトンだが、トレーニングに関しては越えない線がある。何を絶対にサボらないのかと問われ、答えは迷いなく返ってきた。

「アイスバスだ。回復って、昔の僕は本当に意識していなかった。ワークアウトをやって、そのまま一日を続けていたんだ。だからストレッチとアイスバス。この2つは、自分に無理やりやらせている」

「若い頃は、トレーニングが本当に僕のセラピーだったと思う。いまもそうだよ。特にランだ。そこで一番、頭の中を整理できる」

「ヨガを足して、呼吸法も足した。呼吸法は身につくまで一番時間がかかった。時間が必要だからね。それから瞑想だ」

「アイスバスも、それに役立つと思う。呼吸を覚えて、諦めたい気持ちや、出たくてたまらない考えを乗り越えないといけないからね。そういうことが、年間を通して前向きでいる助けになっている」

ラップタイムとデジタルデータに取り憑かれたパドックで、7度の王者ハミルトンのルーティンは静かな示唆を投げかける。