
2026年に導入される次世代パワーユニットでは、1.6リッターV6形式が維持される一方で、MGU-Hが廃止される。その結果、最も目立つ変化はコースサイドで聞こえる「音」になるかもしれない。それは予想外の場所で発生するという。
通常、エンジンはブレーキングやコーナリング時には低回転で作動し、音も静かになる。だが、将来的には回転数が上がり、それに伴って音量も大きくなると、メルセデスのエンジン責任者ハイウェル・トーマスがコメントしている。
その理由は、MGU-Hがなくなることで、エネルギー回収の方式が大きく変わるからだ。ブレーキングによるバッテリー充電は依然として可能だが、それだけでは新パワーユニットに求められる電力をまかなえない。結果として、各チームは車の挙動とサウンドに大きな影響を与える代替手段を編み出した。
「何かしらの方法を考え出す必要があったんだ。我々は、ブレーキングやコーナリング中にエンジンをフルスロットル状態に切り替えることで、追加のエネルギーを生成し、それを直接バッテリーに供給する仕組みにした。つまり、ラップの一部ではエンジンが発電機として機能することになるんだ」
この新機構により、観客は低速コーナーでも高回転のエンジン音を耳にすることになる。最初は違和感を覚えるかもしれないが、それが新時代のF1のサウンドになる。
また、MGU-Hの撤廃によって、より伝統的で大きなエンジンサウンドが戻ってくると期待する声もあるが、トーマスは過度な期待は禁物だと釘を刺す。
「音は少し変わるだけだよ。それはMGU-Hを外したことが直接の原因というよりも、ターボの構造変更によるものなんだ。MGU-Hがなくなることでターボが電動モーターを駆動する必要がなくなり、バックプレッシャーが減る。その結果、音がわずかに大きくなる」
しかし一方で、燃料使用量にも制限がかかる。
「エンジンに投入される燃料の量は、従来の4分の3程度になる。そのため、試験ベンチで確認した限りでは、従来と大差ない音量だったんだ」
メルセデスがマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌ、そしてワークスチームに供給する2026年仕様のエンジンは、まもなくブリックスワースでの生産が開始される予定だ。