
F1ドライバーたちが2026年の新型マシンと規則について、シミュレーターでの走行後に意見を語った。
2025年シーズンの中盤を迎え、多くのドライバーとチームはすでに2026年に照準を移している。シミュレーターで新型マシンを走らせ、その挙動や規則の理解を深め始めているのだ。しかし初期のフィードバックは、レースという観点では厳しい内容が目立った。
挑戦を受け入れる姿勢はあるものの、現行よりもさらに激しい「パワーセーブ戦術」に陥ることを警戒している。また、長いストレートでのパワー切れについてはカルロス・サインツとマックス・フェルスタッペンが指摘した。多くのドライバーが、これまで培った経験を一度リセットし、新しいF1マシンの操縦にゼロから挑む必要があると認めている。やがて順応していくとの見方もあるが、初期段階では違和感が拭えないと感じている。
ルイス・ハミルトン
「僕がF1で好きなことのひとつは、こうした変化が定期的に訪れることだ。そこには多くの革新と進化があり、ルール変更があるたびにチーム全員にとって学習曲線は非常に急になる。僕たちは深く掘り下げ、革新することを求められるんだ。ドライバーの視点からも年々複雑さを増してきている。カルロスが言ったように、次のステップではドライバーが開発に関与する部分がさらに大きくなると思う。特にパワーユニットやその使い方についてだ。
僕は否定的なことは言いたくない。実際には良いものになるかもしれないからね。来季になってみないと分からない。良い方向に転ぶかもしれないし、そうでないかもしれない。でも時間が答えを出すだろう。僕が気に入っているのは、今シーズンのチャンピオンシップを戦いながら、同時に今のマシンと次のマシンを開発していることだ。もし常に同じマシンで、わずかな進化だけを続けていたら、こんなに楽しくはないはずだ。」
アレクサンダー・アルボン
「間違いなく、これまで使ってきたものとはまったく違うだろう。僕たちは慣れていく、それがドライバーの仕事だが、時間はかかると思う。冬のオフシーズンはこれまでのようにのんびりとは過ごせないはずだ。トレーニングを積み、シミュレーター作業により多くの時間を費やす必要がある。さまざまなドライビングスタイルを試しながら、その仕組みを理解していくんだ。
例えばウィリアムズでは、ドライバーをできる限り準備させるためのワーキンググループがある。僕たちに多くの情報と準備を与えてくれるんだ。
パワーセーブはあると思う。まだ初期段階だけど、フォーミュラEを極端な例として見れば方向性は分かるだろう。あちらではドライバーがレースや予選を操作し、どのタイミングでパワーを使うかで戦略を組み立てている。来季はそこまで極端にはならないだろうが、同じような要素はあるはずだ。以前も言ったが、複雑な要求を理解し処理できる脳の容量を持ったドライバーが成功するだろう。」
フェルナンド・アロンソ
「シミュレーターでは1日しか走っていないから、結論を出すのは難しい。もう少し待つか、あるいは実車をテストしてから判断したい。シミュレーターで感じたことが実車では違うこともあるからだ。
確かに今年よりパフォーマンスは落ちる。レーシングドライバーは常に遅いクルマを嫌うものだ。でも、12馬力しかないレンタルカートに乗っても楽しいよね。皆で走り、勝てばチャンピオンを獲ったような気分になる。来年速いクルマに乗れれば僕たちはきっとそのマシンを好きになるはずだし、ランス(ストロール)が楽しめるならそれはいいニュースだ。」
マックス・フェルスタッペン
「パワーセーブはあるだろう。レースによって多いか少ないかの差は出る。今も多少はそうなっている。でも来年はもっと増えるはずだ。それが良いことか悪いことかは、時間が経たないと分からない。」
シャルル・ルクレール
「方向性としては正しいと思うが、僕たちが慣れているものとはまったく違う。ドライバーはこれまで学んできたことの多くを忘れて、白紙の状態から始めなければならない。子供の頃からずっとやってきたことを一度消し去るのは奇妙な感覚だ。でもそれもゲームの一部で、新たな挑戦でもある。別の分野でパフォーマンスを見つけ出すための試練だ。とても違うけど、挑戦を楽しみにしている。」
カルロス・サインツ
「とても複雑だ。走っている間、頭の中の多くを占領する。2013年から2014年にかけてV8からバッテリー管理のある複雑なV6に移行したとき、ルイスは大きなルール変更を経験したと思う。当時も大きなショックだった。ドライバーが以前なら考えもしなかったことを考えなければならなかったからだ。でも皆すぐに慣れたし、適応した。そして今ではそれが普通に感じる。
来年も同じだろう。最初は『一体何が起きているんだ?なぜ毎周ごとにクルマの感覚が違うんだ?』と戸惑う。でも実際にレースが始まれば、すぐに自然になり、新しい基準が普通になるはずだ。その新しい普通が、古い普通より良いのかどうか。それが大きな疑問だ。
でも僕たちドライバーは与えられた状況に適応するだけだ。速く走るためにね。1周で6回も7回もスイッチを切り替える必要があればそうするし、やがてそれが得意になる。
2つの要素がある。ひとつはパワーがあるときの強烈な加速。しかしストレートでそのパワーが途切れることだ。ドライバーは子供の頃からストレートで一定のパワーが続く感覚に慣れている。来年のマシンではパワーが途切れ、スピードが一定になり、やがて落ちていく。
もうひとつは周回ごとに変動があることだ。あるときはパワーが長く続き、あるときは早めに途切れる。すべてはエネルギー回生次第だ。だからストレートごとにパワーもスピードも違い、ドライバーにとって奇妙な感覚になる。」