F1は、歴史の中でも屈指の大改革を前に身構えている。ただ、スポーツが正しい方向へ進んでいると確信している者ばかりではない。
2025年でグラウンドエフェクト時代が終わったり。2026年は車体設計とパワーユニットの両方に大規模な変更が入る。書類上では大胆なリセットだが、元ジョーダン/ジャガーのテクニカルディレクター、ゲイリー・アンダーソンは「パンドラの箱を開ける」と見ている。
見た目だけなら、次世代F1カーは革命的には見えないかもしれない。だが内部は別だ。アンダーソンは、はるかに複雑で気難しく、乗りこなす難度も大幅に上がると考えている。2025年を近年まれに見る大接戦で締めくくったF1にとって、その可能性自体が不穏だ。
彼の懸念は懐古や変化への拒否ではない。複数のレギュレーション時代で車を設計し運用してきた経験に根差した危機感であり、F1が自らの未来を過剰に設計しすぎたという判断だ。
2026年規則は、チームが2022年以降に積み上げてきた学習の多くを白紙に戻す。グラウンドエフェクト由来のダウンフォースは大きく削られ、車はよりフラットなフロアへ寄っていく。
フロントウイングは狭く簡素になり、リアウイングもやや小さくなる。そして最大の見出しは、DRSの置き換えとして導入されるアクティブ・エアロだ。コーナー用とストレート用、2つのモードを使い分ける。
ストレートでは前後ウイングが強烈にドラッグを削る。理屈の上では追い抜きが楽になり、最高速は目を疑う領域へ届く。だがアンダーソンは、ここに火種があると見る。とりわけ、パワーユニットが“根本から変わる”ことと組み合わさった時だ。
「私は、これらの規則が狙い通りに機能するとも、そもそも機能するとも、楽観していない。実際、チームはシーズンを通して、解くのが難しい問題の連続に直面する可能性がある」
「新規則は複雑で過度に技術的だ。来年最初のグランプリでは、数チームが少なくとも3〜4秒遅れでも不思議ではない」
これは衝撃的な後退になる。2025年はQ1最下位とQ3最速の差が1.6秒という、現代でも稀な密集ぶりで終わったからだ。
空力の変更は大きい。だがアンダーソンは、より危険なのはパワーユニット側だと見る。2026年から燃料は100%サステナブルへ移行し、MGU-Hは廃止され、そして最も劇的なのが「総出力のおよそ半分を電力に依存する」設計だ。
「今でさえストレート終盤で上限に当たっている車がある。つまり、高速域で上乗せのパワーを出すだけのバッテリーが足りていない。電動比率が20%でもそうだ。50%になったらどうなる」
「ドライバーが必要とする時にパワーを渡すのは、常に決定的に重要だ。アクセルペダルを床まで踏み抜いたら、欲しいのはフルパワーだ。平均すると、それはラップの60〜70%を占めるエネルギーだ。2026年で最大の問題になり得る」
本能でコーナー進入や立ち上がりを攻めるより、エネルギーマネジメントの妥協が前面に出て、レースの迫力が薄まる。彼はそこまで危惧している。
アンダーソンの最も鋭い批判は、勝敗の決まり方に向けられている。
「最大で、そして最も憂慮すべき影響は、差を生むのがバックルームのスタッフ、つまりエンジニアになることだ。ドライバーではない。FIAとF1は物事を過度に複雑化した。その結果、全員にとって問題を増幅させているだけだ」
「チームが犯すミスが出るのは間違いない。その解決に何年もかかるものもあるはずだ。2025年終盤のように競争力が拮抗するまで、かなり時間がかかるだろう」
アンダーソンは停滞を求めているのではない。苛立ちの核心は「変更の規模」だ。
「本来やるべきだったのは、現行規則を比較的シンプルに“アップスペック”することだった」
彼の構想は明快だ。より小さく軽い車。タイヤコンパウンド間の性能差を広げて戦略を促すこと。車高感度を下げるための小さな空力調整。ルールブックを爆破せずとも達成できた目標だと見る。
さらに彼は、ダーティエア対策というF1の長年の闘いにも冷淡だ。
「これらの車は“空力の投射体”であり、乱流を生む。それは変えられない。……数年もすれば、元いた場所に戻る。本質的には、時間と金の無駄だったと証明された。優秀なエンジニアは、いつだって規則の抜け道を見つける」
すでに一部メーカーが先行しているという囁きもある。少なくともパワーユニット面ではメルセデスが有利だ、という声だ。ただアンダーソンは慎重だ。
「どのチームが先行するのか、あるいは誰がそうなるのかを言うには早すぎる。確かなのは、最終戦のアブダビと同じレベルで拮抗したグリッドを見るまで、長い時間がかかるかもしれないということだ」
