フェルナンド・アロンソは、2026年のF1新レギュレーションが自分のスタイルと経験にどう作用するのか、まだ確信を持てずにいる。勝利や表彰台をつかむために頭脳を使うのは望むところだが、それが「6位や7位を守るため」だけの知恵比べになるのなら誇れない、というのが本音だという。
アストンマーティンのアロンソは、どんなマシンでもレースの中で異彩を放ってきた。周囲が思いつかない判断を重ね、ライバルを翻弄してきた“知将”として知られる。だからこそ、2026年の大変革でも経験が武器になる、と見られている。もっとも本人は、新しい規則がどんな感触になるのか、そして自分の経験がどこまで通用するのかは、まだ分からないと語る。
その上でアロンソが求めるのは、知恵で粘って上位を拾う展開ではない。余裕をもって支配的に走り切る勝ち方だ。
「分からない。結局は状況次第だ。手元にある道具で、少しはやりくりできるのは確かだ」
2025年シーズンを例に、彼は“守るレース”の現実を振り返った。追走が難しいマシン特性の中では、予選で前に出てしまえば、たとえレースペースが不足していても後続を抑え込める場面がある。カタールGPでアロンソの後ろに作られた長いトラフィックは、その象徴だったという。
「2025年はクルマが追いにくかった。予選でうまく走れれば、後ろを抑えられる。ペースがなくてもだ。カタールでも見たと思うけど、僕だって後ろに15台並べたいわけじゃない。5秒のマージンが欲しい。そうすれば、そこでピットインしたら、後ろに誰もいない状態になる」
だが現実には引き離せない。だから経験を総動員して、抜かれないための走り方を組み立てるしかない、と語る。
「でも僕はクルマを引き離せない。だから経験を別の形で使うんだ。いろいろなコーナーで、追い抜かれないようにするためにね」
そして2026年は、別の戦場が生まれる可能性がある。新時代の焦点の一つになると見られるエネルギーの使い方次第で、意表を突く結果を引き出せるかもしれないと見ている。
「来年も同じことが起きるかもしれない。エネルギーのデプロイを、ここで使う、あそこで使う、そういう駆け引きで予想外の結果が出ることもある」
しかし、そうして“脳を200%回して”6位や7位を守り抜くことに、誇りは持てないと断言する。望むのは、知恵ではなくスピードで勝ち切る世界だ。
「でも頭を200%使って7位や6位で終えるのを誇ることはできない。僕はむしろ、頭を使わずに全レースを20秒差で勝ちたい」
キャリア終盤に差しかかり、長くてもあと数年と見られるアロンソは、新時代を前に“勝ち方”への渇望を隠さなかった。2026年のマシンが、彼に知恵比べではなく、支配的な勝利を与えるのか。ベテランの視線は、すでに次の大転換へ向いている。
