ハミルトンの8冠は、単なる記録更新ではない。F1の歴史を大きく塗り替える出来事になるだろう。だがフェラーリ移籍1年目の2025年は、キャリア初の表彰台ゼロ、ランキング6位、ルクレールに86点差に終わり、ハミルトン本人は「悪夢」と語り、オフシーズンはF1から離れ忘れるとコメントしている。

7度の戴冠は、2008年にマクラーレンで初制覇し、メルセデス黄金期の2014、2015、2017〜2020年で積み上げた。速さだけでなく、チームとマシンの方向性を支配し続けた歴史だった。 また2021年には8冠目のチャンスがあったが、最終戦の終盤で赤旗にチャンスを奪われた。以後は勢力図が変わり、勝利のチャンスが小さくなった。

複数回タイトルの系譜を見れば、7回はシューマッハと並ぶ最多タイで、次がファンジオの5回。4回にはプロスト、ベッテル、フェルスタッペンが並び、3回にはセナ、スチュワート、ラウダ、ブラバム、ピケが続く。ファンジオが時代と環境をまたいで勝ったように、ハミルトンの8冠にはテクニカルレギュレーション、競技条件が変わる中で勝つことが求められる。これが達成できればハミルトンは、前人未到の8度のチャンピオンとして、長くF1の歴史に名を残す英雄になるだろう。

現実面では、フェラーリはタイトル争いから遠ざかっており、組織の焦りと熱狂的なファンの期待が過剰に渦巻く。チームメイトは有望視される若いルクレールで、メルセデス時代とは異なりハミルトンには幾つものハードルが立ちはだかる。

2026年の大規模レギュレーション変更は、ハミルトンに有利な変化になるだろうか。フェラーリが最適解を掴み、ハミルトンが適応を短期で完了できれば道は開く。2026年が上手くいかなければ8冠の夢は遠のくだろう。超人的な勝利を重ねてきたハミルトンも2026年には41歳となり、残された時間は長くない。