
キック・ザウバーの2025年は、2024年の屈辱(コンストラクターズ最下位4点)からの反転だった。最終的に70点で9位へ浮上し、最下位常連というレッテルを一度剥がした。だが、劇的に速いマシンを作ったというより、止血と再設計に成功した年だ。2024年は予選で後方に沈み、わずかなチャンスもピット作業やトラフィックで潰れる場面が目立った。2025年も安定感は乏しいが、少なくともポイント圏で戦える週末を用意できた。
背景には資本と統治の変化がある。アウディはサウバーの完全買収を進め、2025年1月に100%取得を完了。さらにカタールの政府系ファンドが少数株式で資金を注入し、組織は延命措置から変革へ舵を切った。指揮系統も刷新され、マッティア・ビノット体制の下でジョナサン・ウィートリーが現場を束ねた。
ドライバーは経験と将来への投資の二段構えとなった。ニコ・ヒュルケンベルグが51点を稼ぎ、イギリスでは19番手から3位にねじ込んで初表彰台を獲得。スペイン5位、開幕オーストラリア7位、ラスベガス7位など、要所で確実に点を拾った。一方のルーキー、ガブリエル・ボルトレートは19点。ハンガリー6位が最大で、オーストリア8位、イタリア8位、ベルギー9位、メキシコ10位と散発的に入賞したが、DNFも多く学習コストは高かった。
ハイライトは、アップグレードが噛み合ったスペインでの復活、雨で経験が勝った英国の表彰台、ボルトレートが自力で順位を上げたハンガリーだ。ヒュルケンベルグはスペインのアップグレードが転期だったとコメントする。だがポイント獲得は、2台で揃って上がるのではなく「1台がどこまで食い込めるか」に依存していた。
2026年はアウディとなり、プライベーターから「数年をかけてチャンピオンシップに挑戦するチーム」に生まれ変わる。キャデラックと共に、どこまで食い込めるか注目される。
