1997年王者ジャック・ヴィルヌーヴが、ランド・ノリスの2025年王座争いを「自分がミハエル・シューマッハと争った1997年」と重ね合わせた。ヴィルヌーヴはポッドキャストHigh Performanceで、タイトルの重みは勝ち方で決まると語った上で、今年のような緊張感のある争いは1997年の記憶を強く呼び起こすと語った。
ヴィルヌーヴが強調したのは、圧勝型のシーズンとは異なるチャンピオンシップだ。終盤、マックス・フェルスタッペンが勢いを取り戻して差を詰め、当初は想定していなかった圧力をかけたことで、ノリスは受け身ではいられなくなったという。ヴィルヌーヴは、ノリスが終盤にかけて踏みとどまり、昨年終盤にフェルスタッペンとせめぎ合った時と同じ姿勢で走り切ったことが、タイトルを決定づけたという見立てを示した。
この見方の背景にあるのが、ヴィルヌーヴ自身の1997年だ。前年にウィリアムズでルーキーながらランキング2位に入り、1997年はハインツ=ハラルド・フレンツェンと組んで王座へ挑んだ。シーズンを通してシューマッハと激しく争い、ヴィルヌーヴ7勝、シューマッハ5勝だが表彰台回数はシューマッハが上回り、序盤から勝利を重ねた末、決着は1点差で最終戦のヨーロッパGPまでもつれ込んだ。
チャンピオン決定の条件は明確で、上位入賞圏内で相手より前でフィニッシュする必要があった。予選ではヴィルヌーヴ、シューマッハ、フレンツェンが千分の一秒まで同タイムを刻む異例の接戦となり、最初にそのタイムを出したヴィルヌーヴがポールを得た。そして決勝では、ヴィルヌーヴとシューマッハの接触を経て、シューマッハがリタイヤし、ヴィルヌーヴが初の戴冠に到達した。
勝負が決まり切っていない局面で、追うフェルスタッペンの反撃が現実的な脅威になり、先頭の心理と戦い方が試される。ノリスのタイトルは、その種類の緊張を最後まで抱えたまま掴み取ったものだ。ヴィルヌーヴは、そう位置づけた。
