カルロス・サインツは、フェラーリからウィリアムズへ移った初年度を、結果で黙らせるシーズンに変えた。開幕前に想像すらしていなかったトップ10入り、そして表彰台2回。過去数年間苦戦していたウィリアムズをドライブした年としては、これ以上ない初年度になった。
「僕のシーズン? 誇れるシーズンだったと思う。去年の終わりにフェラーリを離れてウィリアムズに行った時、多くの人がその移籍を疑っていたし、僕の将来や僕の進み方にも疑いがあった」
「でも今年を終えて、勝つことに飢えているプロジェクトに僕が来たのは、誰の目にも明らかになったと思う。想定より早く“表彰台に戻る”ことができた。人々が、そして僕自身が想像していたより早かった。次の目標は勝利に戻ることだ。そうするために、僕はいま“正しい場所に、正しいタイミングでいる”と思っている」
彼が繰り返したのは、成長は保証されないというF1の冷酷さだ。1年の前進が、次の前進を約束しない。だからこそ、飢え、規律、執念が要る。
「僕がやっているのは、とにかくチームに“プッシュし続けろ”と言うことだけだ。僕にはポテンシャルが見えている。でもこのスポーツでは、1年進歩したからといって次の年も進歩するとは限らない。だから飢え続けないといけないし、規律を保って、これまで以上に強く押し続けないといけない。来年そのひとつを確実に手にするためにだ。もちろん、いつだって期待は高くなる」
一方で、サインツは加入前に“期待値を意図的に抑えていた”ことも打ち明けた。結果がリセットされる初年度で、どこまでやれるかは読めない。それでも、もし昨夏の契約時点で「表彰台が複数ある」と告げられていたなら、迷わず受け入れていたという。
「でも確実に、今年に入る前は期待をコントロールしようとしていた。ウィリアムズ1年目は、結果や可能性がリセットされるのは分かっていたからだ」
「でも言った通り、2024年8月にウィリアムズと契約した時点で“表彰台がいくつかあって、スプリントの表彰台もあって、上向きのトレンドになる”と言われていたなら、僕は間違いなくそれを受け入れていた」
そして彼は、マシン自体の前進を“チームの功績”として強調した。自分の影響が小さい領域で、ウィリアムズがすでに大きなステップを踏んでいたという評価だ。
「まずウィリアムズを称えたい。2025年に彼らが設計してコースに持ち込んだクルマは、最初のレース、最初のテストから、2024年のクルマと比べて大きく前進していた」
「あれは大きなステップだったし、そこに僕が与えられる影響はほとんどない。だからこそ、彼らにとって素晴らしいことだ」
「そして年を通しても開発は良かった。投入したのは小さなアップグレードが一回だけだったけど、たとえ小さくても効果があった」
「それに加えて、セットアップや理解、互いを知ることを通じてクルマを“チームとして”進化させることができた。アレックスと一緒に正しい方向へ進めたと思う」
「普通は、クルマとチームから最大限を引き出すのに時間が必要だ。チームを変えた全員を見れば分かる。でも結果が出なくても頭を下げてやり続けた。いま僕は、このクルマでとても高いレベルにいると思う。ベガスのウエットで見たはずだ。バクーの予選でも見たはずだ。オースティンとメキシコでは本当に強い予選が2回あったし、レースペースも本当に強かった」
彼の視線はすでに来季へ向いている。マシンは今年の延長線で進化するはずで、そこには自分の“インプット”がより反映される。自分好みの方向へ持っていける余地が増えるという読みだ。
「だから、僕のシーズンは間違いなく噛み合った。来年はこのクルマの進化版で臨めると思う。僕はもっと強くなれる。特に、クルマに僕のインプット――僕がクルマに何を求めるか――が入ってくるからだ。今年の時点でも、僕のドライビングにとってもっと“気持ちよく”なる方向へクルマを持っていけたと思う。いまは、より理解できるクルマを運転していて、より良く運転できている。良い仕事だった」
