アブダビGPのタイトル決戦で発生した角田裕毅の5秒ペナルティが、数日たっても話題になっている。レッドブルの角田は、ピットアウトしたランド・ノリスを抑え込むべく積極的にディフェンスを行い、「進路変更の回数とコース外へ押し出した動き」が問題視され、タイム加算とペナルティポイント1点を科された。これにより角田はポイント圏外へ後退したが、ノリスは3位を守って初タイトルを確定させた。
角田本人はレース後、「不可解なペナルティだった」と不満を表明し、レッドブルとともにスチュワードの判断をFIAにレビュー申請する構えだと報じられている。別の場面で類似したディフェンスが見逃されているとの認識もあり、タイトル争いの渦中だからこそ、裁定の一貫性が改めて問われている格好だ。
これに真っ向から異議を唱えたのが、元ハース代表のギュンター・シュタイナー氏だ。自身のポッドキャスト出演で、まず皮肉を交えながらこう切り込んだ。
「アブダビではブレーキング中の進路変更が“流行り”みたいになっていて、また誰かにペナルティを出したかったように見えるね。」
続けて、今回の裁定そのものを厳しく批判した。
「本来、何も起こるべきではなかった。これはレースだ。これこそ観客やファンが見たいものだ。人々は罰を乱発して注目を集めようとするスチュワードなんて望んでいない。」
さらに角田とノリス双方の攻防を、ルールの“ギリギリ”に収まった戦いとして評価する。
「フェアだったし、ちゃんとしたレースだった。ユウキもランドもギリギリのところでやっていたが、すべてうまく収まったし、素晴らしいバトルになった。」
そして最も強い言葉で、現在のペナルティ文化そのものに噛みついた。
「もしこういう攻防を全部やめさせてしまったら、いったい誰がレースを見たいと思う? 彼らは自分たちがスチュワードであることを見せつけたいだけだ。ユウキにペナルティを出してしまったから、他のドライバーにも同じように罰を出さざるを得なくなっている。」
安全とショーのバランスをどこに置くのか──。角田側のレビュー要請とシュタイナー氏の批判は、F1が抱える根本的なテーマを、シーズン最終戦の一件を通じてあぶり出している。
