ラスベガスGPでアンドレア・キミ・アントネッリが見せたのは、背水の陣から賭けに勝利した週末だった。ウェットコンディションとなった予選でQ1敗退を喫したあと、決勝で大胆な戦略に賭け、そこから一気に表彰台争いまで駆け上がった。
勝負所となったのはレース序盤だった。アントネッリは2周目という異例の早さでピットインし、ハードタイヤに履き替える決断を下した。通常ならタイヤライフ的に無謀とも言えるロングスティントだが、路面のデグラデーションの少なさに賭けて、そのままフィニッシュまで走り切るプランBに切り替えた。中盤にはグレイニングが現れ、自身も「最後までもたないのではないか」と疑心暗鬼に陥ったというが、ラバーが落ち着くとラップタイムは再び上昇。後方から少しずつ順位を取り戻していった。
終盤はオスカー・ピアストリやシャルル・ルクレールの追撃を抑え込む我慢比べとなった。さらに自身にはスタート時のわずかな動きに対する5秒ペナルティも科されていたが、ペースを維持してそのハンデを帳消しにする走りを披露。レース後にマクラーレン勢のダブル失格が決まり、アントネッリは最終的に3位表彰台へと繰り上がった。後方スタートとペナルティという逆風を抱えながらのリスクフルな一発勝負は、結果として大きなリターンをもたらした格好だ。
アントネッリ本人は「すごくリスキーな戦略だったが報われた」と冷静に総括する一方で、「レース前日は本当に失望していた。だからこそ今日は自分にとって赦しの一日になった」と心境を吐露する。ブラジルに続く連続表彰台で流れを取り戻したアントネッリは、「シーズン残り2戦を高い位置で終えたい」と視線を前に向けている。

