メルセデス代表トト・ウォルフは、アンドレア・キミ・アントネッリが確実に成長すると常に信じていたと語り、現行マシンの複雑さを理解するには時間が必要だったと明かした。
ヨーロッパラウンド前に表彰台を獲得するなど勢いを見せたアントネッリだったが、その後はプレッシャーが増し、結果を求められる状況となった。序盤の成功が逆に重圧となり、ヨーロッパラウンドでは苦戦が続いた。サーキットを熟知しているはずの彼にとっても、自信が揺らぐ時期だった。
メルセデスはアップデートを一部見直し、アントネッリとジョージ・ラッセルの双方に手応えが戻り始めた。ヨーロッパラウンドを終える頃には、アントネッリは再び本来の走りを取り戻し、オースティンを除けば安定した結果を出すようになった。そして先日のブラジルGPでは、その復調を象徴するような走りを見せた。
スプリントと決勝の両レースで終始ランド・ノリスの後方につけ、グランプリでは終盤に迫るマックス・フェルスタッペンのプレッシャーを見事にしのぎ切った。その冷静な対応は、レースクラフトの成長を印象づけるものだった。ウォルフ代表は、ヨーロッパラウンドでの不振にもかかわらず、アントネッリを来季も起用することに一切の迷いはなかったと語った。
現行世代のマシンは一見簡単に操れそうに見えるが、実際にはタイヤマネジメントを含め、結果を引き出すには高い理解と経験が求められると指摘したウォルフは、アントネッリに過度な期待がかからないよう常に配慮していたという。
「いや、僕はいつも彼がきちんとグリップをつかみ、必要な感覚を得られると確信していたんだ」とウォルフはメディアに語った。
「だからこそ、キミが来年も僕たちと共に戦うことは最初から明らかだった。何の疑いもなかったよ。これらの複雑なマシンでタイヤをマネジメントし、丁寧に扱うということは、経験から学ばなければならない部分なんだ。その意味で、ブラジルでの結果は素晴らしかった」
「もちろん困難な日も多かったが、彼の成長に一瞬たりとも疑いを抱いたことはなかった。ただ、僕は常に周囲の期待を抑えるようにしていたんだ。モントリオールやマイアミのポールの後、イタリアのメディアが“キミ・アントネッリ伝説”と騒ぎ立てたのは、彼に余計なプレッシャーを与えてしまう。だから、しっかり地に足をつけておくことが大切なんだ。ブラジルでは2位に入り、マックスの追撃を退けた。あれは本当に見事だった。でも僕たちが目指すのは、レースで勝ち、チャンピオン争いをすることなんだ」とウォルフは語った。

