
2025年のF1は、勢力図がかつてないほど拮抗している。総合力でマクラーレンが抜きん出る状況ではあるが、予選では複数チームが「千分の一秒」単位のタイム差でポールポジションを争い、決勝でも戦略とピット出口の数メートルが勝敗を分ける展開が常態化した。空力規則が成熟段階に入り、各陣営のフロアやサスペンション技術が収束しつつあること、そしてコストキャップ下での開発効率の向上が、上位勢のラップタイムを事実上の「同一線上」に押し上げた。
技術面では、風洞・CFDの配分は厳格に管理され、少数のアップデートで幅広いコンディションに適応する汎用解を見つけたチームが週末を制す。品質管理のレベルも格段に上がり、テクニカルトラブルでマシンの半数がリタイヤするようなレースは前時代のものとなり、全車完走が珍しくなくなった。結果として、ピットインの一周差やトラフィック処理の巧拙が表彰台を左右し、ドライバーのタイヤマネジメントとミスの少なさが、かつてなく価値を持つ。
しかし、この均衡は永続しない可能性が高い。2026年には新パワーユニット規定と空力大改定が導入され、エネルギー配分や空力コンセプトが刷新される。新規参入を含むサプライヤー体制の変化も重なり、勢力図は再び大きく塗り替わり得る。ゆえに各チームは、目先の2025年タイトル争いと、26年規則への先行投資のバランスという、難度の高い二正面作戦を迫られている。