
角田裕毅は現在暮らしているイタリアから、レッドブル本拠地のあるイギリス・ミルトンキーンズへ移住するつもりはないとコメントした。また現在抱えている課題、特に予選でのパフォーマンスに関しても、その背景を語っている。
彼がビザ・キャッシュアップRB(旧アルファタウリ)に加入した当時、チーム代表だったフランツ・トストは角田を指導すべく、ファエンツァの工場近くに居住するよう求めた。それは、当時の角田がトップパフォーマンスを安定して発揮できていなかったことに対し、規律ある環境を整えるためだった。
以来、角田はイタリアを拠点としてきた。レッドブルのドライバーとなった今でも、イギリスへ移住する意向はない。
「いや、してないし、今のところその予定もないんだ。イギリスにはもう十分いたと思ってる。そこまでのメリットは感じない。イタリアに住むほうが僕にとっては多くの利点があるんだ」
「健康面でもそうだし、誰かの近くに住んでるという意味でもね。正直、ミルトンキーンズに住んでいたときは隔離期間中だったから、いい思い出もなかったし、それが影響してるのは間違いない。でも、F1のスケジュールってすごくハードだから、オフのときにちゃんと心をリセットできる家があるっていうのは、本当に重要なんだ」
「今のところイタリアだと心がリセットされて、すごく快適に感じてる( Italy is allowing me to reset and I feel very comfortable. )。イタリアには満足してるし、ミルトンキーンズにはシミュレーターセッションとかで行けば十分だよ」
角田は、サウジアラビアとマイアミの間に行われたRB19のTPCテスト(テスト用のマシンによる走行)についても言及し、その効果が天候により制限されたことを明かした。
「ちょっとだけドライで走れたけど、それじゃ全体を理解するには不十分だった。典型的なイギリスの天気だったんだ。最初は路面が湿ってて、僕らはウェットタイヤを持ってきてなかった。ドライバーのTPCテストで走行距離を無駄にしたくなかったからね。だから乾くまでかなり長く待った」
「しかも、最後にはちょっとしたトラブルもあった。結局あまり走れなかったけど、クールな経験ではあったよ。ただ、正直なところ違いを感じるのは難しかった。前のレースとは完全に違うコンディションだったし、コーナーの特性も全然違ってたからね」
「混乱を招くような変なフィードバックはしたくなかったから、僕が感じたことは正直に伝えた。でも、マイレージを稼ぐという意味ではいいテストだったと思う」
「学びという点では、感覚的に自然に身についたものはあったと思う。限界についても、そういった部分は筋肉の記憶として自然に刻まれるんだ。でも、セットアップの理解という点では、時間があまりにも限られていて、いろんな調整を試すことができなかった」
「結局、テストはどちらかといえばエンジニアリング側の目的がメインになってしまって、僕自身のセットアップに関してはあまり得るものはなかった。ただ、車にたくさんの変化があって、僕は常にそこにいられるわけじゃない。僕はあくまでそこにいるだけなんだよね」
角田は、予選でのパフォーマンスに関しても適応が難しいと感じていることを明かし、新しいレースエンジニアとの関係構築についても触れた。
「ここまでの進捗には満足してる。自信もある程度はあるんだけど、予選で100%の力を出すときに、初めてそこで“壁”にぶつかるんだ。100%出すのは予選だけだからね。FP1のスタート地点が、以前よりも少し下の位置から始まる感じで、新しいサーキットだと感覚を積み上げるのに少し時間がかかる」
「予選では、今のところほとんど毎回、クルマが新しい挙動を見せてきて、それに対応しきれないことがある。クルマが特別難しいってわけじゃないんだけど、どこが限界なのかを探るには、もう少し時間が必要なんだ」
「運転自体はすごく難しいって感じではないけど、簡単でもない。VCARBのマシンのほうが、どの方向でももう少し寛容で優しかった。レッドブルのマシンは、性能を発揮できるウィンドウがより鋭くて狭いんだ」
「VCARBより楽ではないけど、最初に思っていたよりは良い感じだった。F1に入ってからずっと同じマシンで走ってきて、セットアップも限界も分かってた。でも今は、自然に考えずに走れていたものが、考えなきゃいけなくなった」
「鈴鹿で試したセットアップも、自分では良さそうだと思っていたけど、実際に走ってみたらタイムに現れなかった。バランスは良かったのにね。こういうのは経験からくるものだと思うし、時には“クルマの難しさを受け入れる”ことも必要なんだ。アンダーステアやオーバーステアがあっても、タイムが良ければその方向性を信じるってこと」
「アプローチが変わってきてる。僕はできるだけ多くを学ぼうとしてるし、チームもその方向でサポートしてくれてる。ただ、まだ限界がどこにあるかはっきりとは分かってない。サウジのQ3でちょっとプッシュしたら、大きなスナップが出てきて、それは予想外だった。でも、徐々に分かってくると思う」
「とにかく頭を下げて、ゆっくり積み上げていくよ。チームの雰囲気もいいし、僕とエンジニアもね。彼はスコットランド出身だから、スコットランド訛りの英語と、僕の日本語訛りの英語が混ざってて、面白いんだよね。そういうのも、時間が経てば馴染んでいくと思う」