メキシコGPの決勝前、角田裕毅がサーキット内のショーランでホンダRA272をドライブ。ファンで埋まったグランドスタンドの前でV12の咆哮を響かせた。

この走行は、レッドブルとホンダの“最後のメキシコGP”となる2025年大会を記念して行われた演出で、角田は日本の国旗を想起させる白いボディに赤い円を配したRA272のステアリングを握った。RA272は1965年のメキシコGPでリッチー・ギンサーがF1初勝利を挙げた名車として知られ、ホンダのF1史に刻まれた象徴的なマシンだ。

角田はコースイン後、観客の前で力強いサウンドを披露したが、1周を終える前に速度が落ち、そのままストップした。現地ではマーシャルが急行して安全確保と撤去作業に当たり、決勝セレモニーの雰囲気は保たれた。

一方で、レッドブルとホンダの協業は今季で区切りを迎え、2026年からはホンダがアストンマーティンに、レッドブルは新PU体制へと舵を切る。象徴的なマシンでのセレモニーは、両者の歩みをファンに印象づける場でもあった。角田にとっても日本メーカーの遺産を背負う大役だっただけに、思わぬ“足止め”は惜しい場面だったが、スタジアムの歓声がそれを包み込んだ一幕だった。
