レギュレーションの切り替えは常に、追いかける側にとって大きなチャンスである。しかも十分な予算、設備、そしてトップレベルのスタッフを備えているなら、なおさらだ。これまでストロールが行ってきた大規模投資を踏まえても、アストンマーティンはこの2026年に大いに賭けていると言えるだろう。2026年には45歳を迎えるアロンソ自身、この年がおそらくは三度目のドライバーズタイトルをつかむ最後のチャンスになると自覚しているようだ。実際、2007年のマクラーレン在籍時以来、彼は悲願のタイトルから遠ざかっているのである。

「まだ夢を見ている、なぜだめなのか。2026年がおそらく唯一のチャンスだと思っている。なぜなら2025年はとても厳しいだろうが、それでも夢を見続けているのだ。F1は夢想家のためのものかもしれない。何が起こるかわからないからだ。期待値は高いだろう。新しいマシン、新しいレギュレーション、そしてエイドリアンが手がけたマシンがあるからだ」

アロンソは英BBCの長いインタビューでそう語っている。2026年の到来は遅すぎるようにも見えるが、彼にとっては「まだ間に合う」タイミングでもある。

「たぶん、自分にとってF1での最後のシーズンになると思っている。なぜなら2026年の終わりで契約が満了するからだ。いよいよ結果を示すときであり、真価が問われるときだ。期待も大きい」

近年のアロンソの活躍自体、すでに驚嘆に値するだろう。現代F1において40歳を越えた後も、これほどまでにパフォーマンスを落とさないドライバーはほかに思い当たらないからだ。来年にはルイス・ハミルトンも40歳に到達するが、その前からアロンソは「40歳以降の現役」における常識を塗り替えている。

「メディアの皆がときどきスタッツや数字について教えてくれるが、自分自身としては25歳か30歳くらいの感覚のままF1に参戦しているつもりだ。モチベーションは高く、気力も十分で、フィジカルトレーニングの面でもまったく問題ない。20年間、ほぼ同じルーティンでやってきたからだ」

アロンソの競技寿命を支えてきた最大の要因は、まさに「レーサーとしての生活様式」そのものにある。

「自分の仕事ぶりやトレーニング、そしてF1に対する取り組み方はかなりストイックだった。だから今こうして成果が出ているのだと思う。テストセッションやデブリーフ、ファクトリーやトレーニングの時間を、自分は一度も欠かしたことがない。遊び歩くこともなかったし、パーティー三昧もほとんどなかった。40代になって成果が出ているのは、20代や30代のころからF1に捧げてきた蓄積の結果なんだ」

ストイックな姿勢や入念な準備だけでなく、40歳を過ぎても失われない「モチベーションの源泉」も、アロンソの特筆すべき強みだという。彼自身は、その理由をこう説明する。

「なぜなら、自分はまだ最高のマシンで無双できる経験をほとんどしていないからだ。トヨタでWEC(世界耐久選手権)のシーズンを戦ったとき(2019-20年)は、本当に強力なマシンを持つのがこれほど素晴らしいのか、F1でもこんなふうだったらどれだけすごいだろうと実感した。あのときは思うようにレースを組み立てられたし、結果も出せたからだ」

振り返れば、2005年と2006年にF1で2度のタイトルを獲得した際も「他を圧倒するマシンではなかった」とアロンソは捉えているようだ。

「これまでのキャリアを通じて、自分はその時代最高のマシンに乗っていたとは言いにくい。ワールドチャンピオンになった2005年も、速さだけならマクラーレンのほうが上回っていた。だけど信頼性が低かったから、そこを突いて自分たちがタイトルを取ったんだ。そして2006年も、フェラーリとミハエル(シューマッハ)はパフォーマンスが拮抗していたけれど、特にシーズン終盤の日本GPでリタイアが続いたことでこちらに流れが来た。そうして選手権を勝ち取れたのだ。自分は毎年、今度こそ速いマシンを得られるかもしれないという期待を抱いて走り続けているし、その思いがモチベーションになっている」

これらの言葉からわかるとおり、アロンソにとって「まだ走り続ける」という選択肢は十分に開かれているようだ。だが、いつか「もうやめる」となる日がやってきたとき、その理由ははっきりしているという。

「自分の自信はずっと変わらないはずだが、もしある日、マシンに乗っていて快適でなくなったと感じたら、そのときはやめるだろう。たとえばチームメイトよりも自分のほうが明らかに遅かったり、マシンで出せる限界を自分が発揮できなくなったりしたら、たぶんその瞬間に手を挙げてF1を去るだろう。そうなったらもう楽しくないからだ」

2026年でのタイトル獲得がアロンソにとって本当の「最終幕」になるのかもしれない。ただし、彼はその可能性を閉ざしきってはいない。

「もし2026年のシーズンで何もかもうまくいっていて、自分も楽しめていて、もう1年走る機会があるのなら、そのときはぜひ考えたいと思っている。先にドアを閉めるつもりはない。だけど今は一戦一戦を最後だと思いながら、すべてを味わい尽くしているところだ」