マックス・フェルスタッペンのアメリカGP完勝は、逆転タイトルに現実味を漂わせた。今後もフェルスタッペンの連勝とマクラーレンのミスが重なれば、5度目のタイトルに手が届くシナリオが見えてくる。シーズン当初、タイトル争いには絡めないと考えていたフェルスタッペンに、失うものは何も無い。一方マクラーレンの二人は実質初めてのタイトルチャレンジであり、チームメイトの存在も含め巨大なプレッシャーがのしかかる。フェルスタッペンは、

「こんな反撃を予想できた人はいない。もし今の巻き返しを予見していたなら“馬鹿げている”と言われただろう」

とコメントし。モンツァ〜バクー〜オースティンで一気に取り戻した流れを振り返った。マクラーレンが主導してきた今季の趨勢に、シーズン後半になって肉薄しタイトル争いに参加したことは、フェルスタッペンも明確に意識していることがうかがえる。

なぜCOTAでレッドブルは速かったのか。ジョージ・ラッセルは

「RB21は車高が極端に低い状態で空力マップが最も生きる。高速コーナーが多いCOTAや鈴鹿、シルバーストンで突出するのはそのためだ」

と分析。軽い燃料で限界まで車高を落とせる予選やスプリントで優位が際立つ一方、決勝では速度が落ちて車高がわずかに上がり優位が和らぐ、とも指摘した。レッドブルの強みは、フロアが路面に吸い付く領域で最大化され、そこを外れると各車の差が収れんする、という見方だ。

マクラーレンの底力は依然有効だが、スタートで前に出たフェルスタッペンをコース上で抜く難易度は今後も高い。メキシコ以降は、路面温度と風、路面の段差に応じて「車高をどこまで攻め切れるか」というセットアップ勝負が増すだろう。王者の逆襲は、低車高域での空力効率という武器を最大化できる舞台が続けば、さらに勢いを増す可能性がある。