マクラーレンの主導権をめぐる議論が熱を帯びている。発端は、元F1ドライバーのフアン・パブロ・モントーヤが語った「どのチームにも、程度の差こそあれ、“ひいき”は存在する」という見立てだ。彼は、F1が高度な政治と綿密な資源配分で成り立つプロスポーツである以上、開発リソース、戦略判断の優先度といった“目に見えにくいレイヤー”で差が生まれ得ると指摘するのである。

今季のマクラーレンは、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリという強力なラインアップがダブルで勝機をつかむ局面を増やしてきた。だが、どちらにアップデートを先行導入するか、どちらをアンダーカットの筆頭に据えるか、あるいはセーフティカー下でどちらのピットを優先するか――細部の意思決定は、結果として“主導権”の体感差につながりやすい。

マクラーレンについて、彼は次のように見ている。

「最も長い歴史を持ち、チームに最も長く在籍し、あらゆることを成し遂げてきたのはランドだ。オスカーも素晴らしい仕事をしているが、歴史があり、よりマクラーレンの一員であるのはランドだ。」

もっとも、彼の主張は特定ドライバーの肩入れを断じるものではない。チームがタイトル争いを見据えるほど、統計的に勝率が高い側へ微妙な重心を寄せるのは合理的で、年間ポイント最大化のための“企業判断”に近い。ノリスの一発とレース運び、ピアストリのタイヤ管理と終盤の鋭さ――両者の特性差はセットアップやスティント計画にも反映され、時に“ひいき”と映る。