
イタリアGPではフェルスタッペンが今季3勝目を飾り、見事なまでにレースを支配した。チャンピオン争いに絡むには遅いのかもしれないが、このレースはレッドブルの復活宣言となった。一方でチームメイトの角田裕毅は予選10番手、決勝も歯がゆい位置に留まり、同じマシンのはずの2台に深いコントラストが走った。ここに仕様差という現実が横たわる。
角田は週末の取材で「今週はフロアが違う」と明言した。レッドブルはモンツァでフロアのアップグレードを持ち込み、搭載はフェルスタッペン側が先行。宣言はモンツァ専用ではないが、低ドラッグ効率を問うイタリアの高速レイアウトでは、とりわけフロアの作動安定性とドラッグ削減が効く。角田は旧仕様で戦い、予選ではフェルスタッペンに約0.7秒遅れを取った。数値は残酷だが、要因は技術的に筋が通っている。
では、なぜ仕様差が残ったのか。第1に生産キャパシティの問題だ。アップグレードは“宣言=量産完了”ではない。限られた製造リソースは先に「勝てるパッケージ」へ投下される。第2にセッティング哲学。モンツァでは低ダウンフォース化でフロアのシール性(車体底面の気流保持)が崩れやすく、同じ数値に見えても新旧で作動点がズレる。新フロアはドラッグを削りつつ高荷重域での安定を狙う一方、旧フロアでは路面変化や後続走行時の気流乱れに敏感になりやすい。角田がレース中に“楽に付いていけない”場面を招くのは自然な帰結だ。
もちろん、全てを仕様差の一語で片付けるべきではない。角田はシーズン前半から「同スペック化までの遅れ」に苦しみ、チーム側もその影響を過小評価していたとされる。ドライバーは“あるがまま”で結果を出すしかないが、比較すべきは“同一仕様・同条件”でのパフォーマンスだ。
――次戦までの課題は明快だ。アップグレードの同時適用、空力マップの共有、そしてドラッグとスタビリティの再最適化。復活の物語を“チームの二台”で完結させられるかだ。