F1は再び、モナコ・グランプリをどうすべきかという難題に直面している。今年は2回のピットストップが義務付けられたが、効果は無かったとドライバーや関係者の多くが語っている。

使用タイヤに変化を持たせて、マシン毎・戦略毎にペースを変えても、オーバーテイクが難しいことに変わりはなく、結局はコース上に長いトレイン出来てしまうことが証明されてしまった。今年はさらに、トレイン発生を予想し、これを逆手に取った「意図的に遅く走り続ける戦略」がまかり通ってしまった。

マックス・フェルスタッペンはViaplayのインタビューで皮肉を込め、「マリオカートの中にいるようだった」とコメントしている。

「すごくエキサイティングだったよ。本当に楽しかった。最高だったね。来年は3回ピットストップにすればいいんじゃない?いや、4回でも5回でもいいよ。少なくともチームのピット練習にはなるし。僕は4回ピットしても4位で終われたと思う。前の方で走ってる僕たちにとっては、何の意味もなかった」

「じゃあ、次はマリオカートみたいにバナナでも投げればいい。どうせここじゃレースなんてできないんだから、1ストップでも10ストップでも変わらない。今のF1マシンじゃ、F2カーにしかオーバーテイクできないよ」

ジョージ・ラッセルは、シケインをカットしてアレックス・アルボンを追い抜き、30秒のペナルティを受けた。

「どうせポイント圏外だったし、モナコで全力で攻める楽しさを味わいたかっただけ。皮肉なことに、レース中に25周分の予選ラップを走って、ペナルティを受けなかった場合よりも上の順位で終われた。システムが破綻してるってことだよ」

ニコ・ヒュルケンベルグも同意した。

「新しい試みに感謝はしているけど、全く機能していなかった。確かに戦略的な動きは多かったけど、それはレースとは呼べない内容だった」

ランド・ノリスは、モナコGPをエンタメ化しようとする試み自体をやめるべきだと語った。

「一番上手く走ったドライバーが勝つべきだと思う。それだけさ。何故そんなに高い期待を持ってるのか、僕には分からない。だってこれはショーじゃない。スポーツなんだから」

クリスチャン・ホーナーは、唯一の解決策はモナコのレイアウト自体を変えることだと主張した。

「トンネル出口や1コーナーにブレーキングゾーンを作るべきだと思う。今のマシンは大きすぎて、前の車を抜くなんて不可能だ。

トト・ヴォルフは次のような案を出した。

「最大ラップタイムを導入すれば、相手があんなに戦略的な嫌がらせをするのを防げるかもしれない」

マクラーレン代表アンドレア・ステラはこう語った。

「必要なのは、小さくて軽いマシンだ」

ローソンのスロー走行を仕掛けたレーシング・ブルズCEOのペーター・バイヤーは、「2ピットストップ」が慎重に議論された結果だったと語った。

「正直、F1が次に何をすべきか思いつかない。コースを変更できないなら、規則で介入するしかなかったんだ。他にもソフトタイヤ限定とか、C6のみ使用といった案もあったけど、現実問題としてこのコースでは抜けない。速いタイヤを履いて走っても、今のデカいマシンじゃ追い抜けない」

元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは警鐘を鳴らす。

「この状況が続けば、観客はやがてモナコGPを受け入れなくなり、グランプリの終焉を迎えることになるだろう」

オーバーテイクを可能にするには、マシンを小さくするしかないだろうか。来年は多少小型化されるが、F1マシンの大型化が進み過ぎているのは事実だ。また、F1でオーバーテイクが徐々に困難になってた要因の一つとして、ブレーキ性能の向上がある。過去のマシンと比べて、非常に短距離で減速が出来てしまうため、コーナー進入時に勝負を仕掛けられる距離が短くなり、ブレーキングポイントに個人差が無くなっている。