元F1ドライバーのフェリペ・マッサが、2008年シンガポールGP「クラッシュゲート」を巡る訴訟について新たな決意を示した。マッサは「最後までやり抜き、公正な結末を得る」と強調し、最大8,200万ドル(約121億)の損害賠償を求める法廷闘争を続ける姿勢だ。英国ロンドン高等法院での初回審理は2025年10月28〜31日に予定されており、審理開始が目前に迫る中での闘志宣言となった。

訴えの相手はFIA(国際自動車連盟)、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)、そして当時の商業面トップだったバーニー・エクレストン氏。焦点は2008年シンガポールGPでのルノーチームの意図的なクラッシュにより操作されたレース結果が是正されなかったことにより、当時フェラーリのマッサが受けた不利益が適切に是正されなかったという点にある。

マッサは2008年、最終的にルイス・ハミルトンにわずか1ポイント差で王座を逃した。この件は翌年2009年になって表面化し、当時ルノー関係者に重い処分が下ったが、これによってレース結果や獲得ポイント、タイトルは動かなかった。もしこのレースが2008年のチャンピオンシップから除外されていれば、シンガポールGPで3位となったハミルトンの6ポイントが無効になり、マッサがチャンピオンだった。

2023年、当時のF1最高責任者であったエクレストンは、インタビューに対して、自身と当時のFIA会長であるマックス・モズレーが、「2008年中に既にこのクラッシュの真相を知った」と認め、「規則に照らし合わせれば、シンガポールでのレースを除外すべきだった」と発言している。マッサは、運営側が当時の時点で十分な調査や是正措置を行わなかったことが、タイトルの決着とその後のチャンピオンとしての収入機会等に影響したと主張している。

一方で、被告側は時効を含む法的抗弁を示唆しており、争点は時効適用の可否と、競技運営に「(チャンピオン決定)結果の無効化」等の義務があったか、その不履行とマッサの経済的損失の因果関係に及ぶ見通しだ。英メディアは、マッサ側が近時の発言や証言を新証拠として位置づけ、審理での立証に自信を見せていると伝えている。今週の欧州報道や専門メディアは、マッサの「最後まで戦い抜く」という最新コメントとともに、来月の高等法院での審理入りを改めて強調している。


2008年シンガポールGP 決勝
※マッサは、ポールポジションからスタートしたが、ピットストップ時に給油ホースが抜けないトラブルで後退、50周目にスピンしたところへスーティルが接触してリタイヤとなった。
※入賞ドライバー
1:F.アロンソ(ルノー):10P
2:N.ロズベルグ(ウィリアムズ):8P
3:L.ハミルトン(マクラーレン):6P
4:T.グロック(トヨタ):5P
5:S.ベッテル(トロロッソ):4P
6:N.ハイドフェルド(ザウバー):3P
7:D.クルサード(レッドブル):2P
8:中嶋一貴(ウィリアムズ):1P