
マックス・フェルスタッペンの王座争いへの復活が、マクラーレンに強力なジレンマを突きつけている。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリに自由な戦いを許すのか――。シーズン当初の段階で「もはや今シーズンのアップデートは不要」といわれたマクラーレンのアドバンテージが危ういものとなった。
アメリカGPスプリントでのマクラーレンの“ダブルDNF”という混乱がついに事態を決定的にさせた。フェルスタッペンはスプリントで、これ以上は考えられない完璧な仕事をして、ノリスまで33ポイント差に迫った。ピアストリまでは55ポイント差だ。
レッドブルのヘルムート・マルコはViaplayに対しこう語った。
「彼らはプレッシャーを感じている。もう楽に勝てなくなっている。我々は攻め続ける。彼らを動揺させることができているし、それがうまく機能しているようだ。」
Skyドイツのティモ・グロックも、マクラーレンの内部マネジメントが今シーズン最大の試練を迎えていると指摘した。
「彼らはいま、多くの課題に直面している。そしてマックスは、彼らを苛立たせることしか考えていない。」
マクラーレン内部では、プレッシャーと過去の記憶が重なっている。チームCEOのザク・ブラウンは、現在の状況が悪名高い2007年シーズンを彷彿とさせると認めた。当時、フェルナンド・アロンソとルーキーのルイス・ハミルトンのチーム内バトルが、フェラーリをドライブしていたキミ・ライコネンにタイトルを奪われる結果を招いた。
「2007年の再来か? そのリスクはある。当時のように、2人のドライバーが同点で、最終的にキミが少し上回ってチャンピオンになった。でもそれがマクラーレンのレーシングスタイルなんだ。僕たちは2人ともチャンピオンになれる力を持つドライバーで戦いたい。
一方で、ナンバー1とナンバー2を決めてしまえば、コンストラクターズ選手権での可能性を危うくする。それがこのスポーツの難しさなんだ。我々はレースをしたい。2人に勝つチャンスを与えたい。それがリスクを伴うことは承知しているし、2007年のような結果になる可能性も理解している」
そしてブラウンは、フェルスタッペンの再上昇がこの構図を一層複雑にしていると認めた。
「今のマックスは、あまりにも近づきすぎている。オランダで見たように、状況は一瞬で変わる。だから一戦一戦を見つめて集中していく」
一方でチーム代表のアンドレア・ステラは、冷静に現状を見つめている。
「今のレッドブルとフェルスタッペンが最も強力なパッケージを持っているのは事実だ。予選で我々の2人がリズムに乗るまで少し時間がかかったが、それで落胆してはいない。
この暑いコンディションではタイヤの劣化が鍵になる。明日のレースを楽しみにしている。」
その一方で、マルコはフェルスタッペンのモチベーション復活こそが最大の脅威だと明かした。
「競争力を失っていた頃、マックスは少し興味をなくしていた。GTカーのレースに夢中で、彼の機嫌を取るためにニュルブルクリンクの話をしていたくらいだ。
でも今はマシンがうまく機能していて、成功も収めている。そのモチベーションがすでに数テンポの速さを生んでいる。
彼は今、レースを楽しみ、笑顔を取り戻している。それこそが必要なことなんだ。タイトル争いに戻ったとはまだ言えないが、この週末は確実に期待できる。」
フェルスタッペンの復調とともに、マクラーレンは再び岐路に立たされた。自由な戦いを貫くのか、それとも勝利のために秩序を敷くのか――。その決断が、2025年シーズンの行方を左右することになりそうだ。