今季7戦を終えて、オスカー・ピアストリとランド・ノリスがチャンピオンシップで1位と2位につけ、その背後にはフェルスタッペンが3位につけている。マクラーレンは2008年にハミルトンが初タイトルを獲得して以来となるドライバーズタイトルのチャンスを手にしている。

マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンが直面している課題は、2人のドライバーの野心をどう管理するかという点だ。ブラウンは、そのリスクを理解しつつも、チームの野心を最優先に考える現実主義を貫いている。

「コンストラクターズを勝つ最善の方法は、ドライバーズで1-2を取ることだ。それが目指すところなんだ。だから、どちらが1位か2位かは、公平で透明な扱いのもとで2人自身に決めさせる。直近のレース(イモラ)では、Q3でピアストリが先に走った。その前のレースではノリスが先だった。」

「我々にとって、それはごく自然な判断だ。
2人とも、特別扱いは求めていない。求めているのは公平な扱いだけだ。そしてそれを与えている。2人はとても満足していると思う。あとは、“勝つのは最も優れた者”というだけさ。
願わくば、最終戦で2人がタイトルを争っていて、お互いにポイントを奪い合うことなく、他の誰か──マックスとか──が割って入ることもない、そんな展開になってほしい。でも、もしそうなったとしても、チャンピオンになったドライバーはより良い仕事をしたということなんだ」

ブラウンは、どちらか1人の成功のために、もう1人の機会を奪うことは望まないという立場を貫いている。

「私の考え方は、どちらか一方が明らかに有利だと判断できるまでは、どちらかを優遇することはしないというものだ。昨年はその判断をしたが、今は違う。コンストラクターズの視点では、それが一番の得策だ。
もちろんドライバーズの視点から見れば、マックスには“110%のサポート”があるから、チームメイトがサポート役に回っている分、いくつか余分にポイントを稼げているかもしれない。うちの場合は2人が互いにポイントを奪い合ってしまう。2007年のようにね。当時は、うちのアロンソとハミルトンが同点で終わって、結局ライコネンにタイトルを奪われた」

フェラーリのキミ・ライコネンが、(マクラーレンのペアだった)アロンソとハミルトンからタイトルをかすめ取るという劇的な展開となった2007年を思い起こせば、今季も、フェルスタッペンがピアストリとノリスを追い上げ、同様の展開になる可能性は十分にある。しかし、ブラウンはどちらかのドライバーの成功を、もう一方を犠牲にして成し遂げるような形にはしたくないと断言する。

「うちのドライバーたちは、19人すべてのライバルを倒してチャンピオンになりたいと思っている。だから、明らかにどちらかが抜け出すまでは、サポート役を置くようなことはしたくない。私としては、2人でチャンピオンを争う展開の方が望ましいんだ。
2人とも、“チームがどちらかをサポート役に回したから勝てた”というような形で勝ちたいとは思っていない。それよりは、お互いを含む全員に打ち勝ってチャンピオンになりたいんだよ。」