マクラーレン勢が先頭を走る今年の選手権は、ノリス対ピアストリのまま決着を迎えると誰もが考えていた、現在の微妙な状況は歴史の逆転劇が示す示唆に富む。現在はオスカー・ピアストリ324点、ランド・ノリス299点、マックス・フェルスタッペン255点。差はピアストリ→ノリスが25点、→フェルスタッペンが69点で、残り7戦(スプリント3戦を含む)=最大で199点が未配分だ。

過去をひも解けば、2012年のセバスチャン・ベッテルは「残り7戦・39点差」からの逆転、2007年のキミ・ライコネンは「残り2戦・17点差」をひっくり返して最終戦で戴冠している。現行の優勝25点制とスプリントのポイント加算余地を踏まえれば、69点差でも理論的には十分射程に入ることがわかる。

鍵は三つ巴の力学だ。フェルスタッペンが勝つ週に、ピアストリとノリスが互いにポイントを取り合えば、単独エースよりも差は縮まりやすい。実際、直近2連勝でフェルスタッペンは差を詰め、マクラーレン陣営もチャンピオン争いの破壊者(ディスラプター)として無視できないと認める。史上の逆転例が示すのは、大量得点の週末を何度つくれるか——そしてライバル二人の点をどう削るかだ。


チャンピオンシップ逆転の歴史
※当時のポイント配分は、9-6-4-3-2-1 や 10-6-4…など、現行の25-18-15…とは異なる

2012年:セバスチャン・ベッテル(39点差/残り7戦)→ 逆転王者
アロンソに39点差も、シンガポール以降の連勝&上位完走で巻き返し、最終戦ブラジルで3点差の戴冠。

2007年:キミ・ライコネン(17点差/残り2戦)→ 最終戦で逆転
日本GP終了時点でハミルトンに17点差。中国、ブラジルの連勝で逆転し、最終戦サンパウロで1点差タイトル。

1986年:アラン・プロスト(6点差/残り1戦)→ 最終戦アデレードで逆転
最終戦前ポイントはマンセル70、プロスト64、ピケ63。決勝でマンセルが高速バースト、ピケが保守的ストップ、プロスト優勝で逆転王者になった。

2010年:セバスチャン・ベッテル(15点差/最終戦)→ 最終戦アブダビで逆転
最終戦前はアロンソ246、ウェバー238、ベッテル231、ハミルトン222。ベッテルが勝利し、アロンソはピット戦略にはまり7位、ベッテルが初タイトルを掴んだ。

1999年:ミカ・ハッキネン(4点差/最終戦)→ 最終戦鈴鹿で逆転
最終戦前はアーバイン70、ハッキネン66。決勝でハッキネン優勝、アーバイン3位で2点差逆転の戴冠。