サンパウロでマックス・フェルスタッペンが見せたのは、戦略と執念が噛み合った逆襲だった。ピットレーンスタートから序盤で混乱をくぐり抜けると、無線では「ハード(タイヤ)は良くない」「攻めの手で行こう」とタイヤ傾向と攻勢方針を即断。レース中盤はギャップタイム管理で隊列の波を読み、終盤に向けてアンダーカットとタイムアタック周回を重ね、やがて表彰台圏内へ踊り出た。レッドブルの判断と実行の速度は他を圧倒していた。

今回レッドブルは予選の失敗を抱えたものの、レースペースは大幅に改善されていた。角田は2度の10秒ペナルティがなければ7位あたりだったといわれるが、周回数がもう少し多ければピットスタートから2位を狙えたフェルスタッペンの勢いは別格だった言うしかない。

勝負どころは終盤のソフト投入だった。残周回と路面進化を見極め、リスタート後の立ち上がりで一気に温度を入れる。これによりメルセデス勢の前でクリアエアを確保し、優勝争いが見える展開に持ち込んだ。結果は3位。ピットスタートからの表彰台という希少な達成は、単なる追い上げではなく、戦略・無線・ドライビングが三位一体で積み上げた帰結だった。

この走りに、元F1ドライバーで解説者のマーティン・ブランドルは「史上最大級」と評した。雨の混乱頼みではなく、ドライで作り上げた純粋なレースクラフトとペースの裏付けを理由に挙げ、タイトル争いの文脈を越えて記憶されるべきパフォーマンスだと語った。ノリスとのポイント差は大きいが、ピットスタートのハンディを埋めるには十分な結果だった。タイトル争いに関して、プレッシャーは無い、失うものは無いと受け流すも、サンパウロのレースはフェルスタッペンの勝利への執念を際立たせた。