
多くのF1ドライバーにとって「フェラーリで走る」ことは永遠の夢だ。しかし、マックス・フェルスタッペンにとって赤い跳ね馬に乗る唯一の理由は「勝利」であり、それを成し遂げられるなら「さらに特別だ」と強調した。
レッドブルで4度のF1ワールドチャンピオンに輝いたフェルスタッペン。ファン・マヌエル・ファンジオに並ぶ5冠以上を狙っていたが、今季その挑戦は厳しい局面にある。
現在27歳の彼はドライバーズランキング3位。残り9戦でオスカー・ピアストリに104ポイント差をつけられており、これまでの勝利はわずか2回にとどまる。対照的にマクラーレンの若きエースはすでに7勝を挙げ、主役の座を奪いつつある。
“絶対王者”の牙城が揺らぐ中、フェルスタッペンの次なる一手に世界中の注目が集まっている。
2015年にトロ・ロッソでデビューして以来、常にレッドブル・ファミリーの中心にいたフェルスタッペン。しかしここ18か月は移籍の噂が絶えず、F1界を賑わせてきた。メルセデス行きの話題が盛んに報じられる一方、父ヨス・フェルスタッペンは「フェラーリ」も候補の一つとして会話に上がっていたことを明かした。
ヨスはViaplayにこう語っている。
「メルセデスの話をするのは今年に限ったことではない。今年はこれまで以上に少し多かったがね」
マックス自身もフェラーリの可能性に触れた。
「彼らには来年すでに2人のドライバーが契約しているから、今は何の話もないんだ。可能性があるか?人生にはいろいろな決断のチャンスがある。もちろん可能性はある。現時点でそういう未来が見えているわけではない。でも誰にも分からない。僕がF1であとどれくらい走るのかも分からない。だからまだまだ不確定要素が多いんだ」
また、ハミルトンの移籍やフェラーリの現状に関しても冷静に分析した。
「ハミルトンがメルセデスでどう動いていたのか、彼がどう感じているのか、フェラーリのチーム状況がどうなのか、僕には何も分からない。彼はすでに強力なドライバー、ルクレールがいるチームに加わった。すぐにチームメイトを打ち負かすのは簡単じゃない。ルクレールはチームに溶け込んでいるし、言語も話せる。これらのマシンは複雑で、なぜ速いのかそうでないのかを理解するのは難しいこともある」
そしてフェラーリというブランドへの特別な思いを口にした。
「フェラーリは巨大なブランドだ。すべてのドライバーが『いつかはフェラーリで走りたい』と夢を見る。
でもそこで間違えてはいけない。ただフェラーリで走るために行くべきではない。僕がもし行くとしたら、勝てるチャンスがあるから行くんだ。そしてフェラーリで勝てるなら、それはさらに素晴らしいことだ。ブランドの情熱や感情に流されてはいけない。本当にそこが正しい場所だと感じた時に行くべきなんだ」
フェルスタッペンは来季もレッドブルに残る予定だが、契約には特定条件下で離脱可能な条項が含まれていると言われている。一方のフェラーリは、ルクレールが長期契約を結び、ハミルトンも2027年までのオプション付きで加入済み。来季のラインナップはすでに固まっている。
揺れる王者、迫る新世代、そして跳ね馬への憧れ――。フェルスタッペンの未来は依然として霧の中だ。しかしその言葉が示すように、もし赤いマシンで勝利を掴む日が来れば、それはF1史に残る瞬間となるだろう。